暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission8 ヘベ
(1) マンションフレール302号室/トリグラフ港~マンションフレール302号室
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
大事なことは写真じゃないのに。こんなんじゃ、とーさまの言いつけは守れない)

 あのメンバー全員に必要な写真を取りに来てもらうよう、ルドガーに伝達を頼んだ。それぞれ会う機会があれば写真を求めてくるだろう。

 ――“そりゃあ、写真を撮るのが楽しいからだろう”――

 がつん! と、自分で自分の頭を殴った。通行人がすわ何事かと彼女をふり返ったが、彼女は揺るぎなかった。

(ユースティアにタノシイは要らない。とーさまが教えてくれたことのなかにタノシイはなかった。ダイジョウブ、できる。これからはとーさまの言いつけ通りにするんじゃなくて、とーさまの言いつけだけを守って生きていこう。ルドガーを救う。ユリウスを生かす。それがユースティアの産まれた理由。愛したとーさまのネガイ。おじさま方のネガイ。ワタシだけが叶えられる)

 足元から猫の鳴き声がした。心臓が大きく跳ねた。
 見下ろすとルルがいた『ので』、ユティは即座に『飛びのいた』。そして、はたと気づいた。

「オマエは正史世界のルルだったね」

 ルルが足にすり寄ろうとしたので、ユティはひらりとルルを躱した。

「ナァ〜」
「ワタシに触らないほうがいい。あの遺跡にいた『ルル』みたいに、オマエも細切れにしちゃうかもしれないよ」
「ナァ〜!」
「あそこで『ルル』を連れ帰ったらミラに同時存在の不可能性を知られた。ミラのメンタルは自分で手一杯でルドガーに向かわなくなる」

(分史世界のルルは、オーディーンとの戦闘のどさくさに紛れて処理できたからいいけど。あの任務は何故かスレスレな話題ばかり出てひやひやしたのに、物証まで出てきてどれだけ焦ったか)

 見下ろす。ルルは物言いたげにユティを見上げてくる。ユティは苦く笑って首を振った。

(ルドガーには、ユリウス以外の人とたくさん仲良くしてもらわなくちゃいけない。ミラは恰好のポジション。もうしばらくルドガーだけ見つめて?)

 感傷を打ち切って帰途に就いた。ルルは距離を空けて付いて来た。



 マンションフレールに帰り着いた。階段から3階へ上がり、帰ると表現して差し支えなくなった302号室のドアを開けて部屋に入る。


『『『おかえり!!』』』


 迎えた声はルドガー一人のものではなかった。
 ユティは玄関で立ち尽くしてしまった。

 4人暮らしでちょうどいいくらいのテーブルに、5、6……10人もの老若男女詰めて座っている。さらにその10人は、ここに住むルドガー、エル、ミラを除いても全員が知った顔。

「お前が言ったんだじゃないか。写真取りに来るようにみんなに伝えてくれって」
「みんな同じ日に、なんて言ってない」
「言ってないな。こっそり集合かけたのは俺たちだ。予定すり合わせんのが多少めんど
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ