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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission8 ヘベ
(1) マンションフレール302号室/トリグラフ港~マンションフレール302号室
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人で俺ら全員を守ってくれたじゃないか! ユティが頼りないと思うんなら俺に対してだって。――こんなんじゃカメラやってる暇なんかないって思わせちまったのかな……」

 フォローし合うつもりが、ルドガーもミラもさらにどんよりしただけだった。

「んー。てゆーか」

 今まで黙っていたエルが口を開いた。

「ルドガーもミラもさ、ユティにちゃんと『ありがとう』言った?」
「「――え?」」
「エル見てたよ。あの時ユティ、カメラぽーいって投げてから変身してた。カメラはユティのタカラモノだって言ってたのに」

 いつも不意を突かれる撮影を怒ったりねめつけたりするばかりで見落としていた。
 なぜユティは写真を撮るのか。
 なぜユティはカメラを持ち歩くのか。
 いつ、どこでだったか、本当に何の気なしに、退屈しのぎ程度に尋ねたことがあった。

 ――“実際にあったコトや会ったヒトを写真で残すのが、ユティにとってのタノシイコトだから”――

 ありふれた動機。奇抜な彼女にしてはまっとうな動機。たった一度きりの返事。
 せっかく聞いたくせに、自分はすこーんと頭から抜かしたまま忘れていた。

(俺やミラが頼りなく思われたとかは今重要じゃない。どんな理由があったにせよ、俺たちはあの子が大事に大事に胸にしまってたものを捨てさせたんだ。捨ててまであの子は俺と兄さんの盾になって戦ったんだ。痛そうな顔だった。辛そうな声だった。なのに俺はあの後、自分と兄さんのことで頭が一杯だった)

 ア・ジュール地方に皆で親睦旅行に行った時にはまだカメラを持っていた。旅行中にルドガーは果たしてユティときちんと顔を合わせて話しただろうか。

 ユティが骸殻能力者だと知れ渡ってからは、彼女も積極的にルドガーと任務を分担した。ルドガーよりよほど慣れたユティの槍捌きに嫉ましささえ感じて、会話は少なかった。


 ガタン! ルドガーはイスから威勢よく立ち上がった。ミラとエルが目を丸くする。

「エルの言う通りだ。あいつにお礼しないと。――二人とも手伝ってくれ」




 そんな小さな会議があってから数日後。
 何も知らない当のユティはこの日、トリグラフ港の埠頭でぼけっと空と海を眺めていた。

 胸に抱くのは大量の写真が入った袋。
 少し前から、全員でア・ジュール地方を旅行した時の記念写真を現像に出していた。

 あの日からユースティア・レイシィの指はシャッターを切っていない。

 本当はキジル海瀑での一件からスッパリやめるつもりだったのに、旅行の計画が持ち上がって中途半端になっていた。これでようやく区切りがついた。

(いい転機だったのよ、あれも。ただ個性を演出するための小道具だったのに、いつのまにか逆転してた。ユースティアの一番
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