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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission8 ヘベ
(1) マンションフレール302号室/トリグラフ港~マンションフレール302号室
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 某月某日。クルスニク家では緊急会議が催されていた。

「異常事態だ」
「ユユシキジタイだね」
「癪だけど私もあなたたちに賛成。絶対おかしいわよ、アレ」

 議題はこの場にいない、マンションフレール302号室の住人第2号。

「「「ユティが写真を撮らなくなった!!」」」

 ルドガー、エル、ミラは示し合せてもいないのに、きっかりぴったり息を合わせて言い切った。


 気づいたのは4個目のカナンの道標、『箱舟守護者の心臓』の回収を終えてだった。
 ヴェルから分史探知の連絡が入ったことで、ルドガーはその時たまたま同行していた女性陣を連れて任務に臨んだ。
 この時、何故か進入点のディールではなくウプサーラ湖跡でユティが合流したが、ルドガーたちの誰も気にしなかった。だから、変化に気づいたのは任務後だった。

 分史の遺跡内で魔物(?)に遭遇する、戦う、連携する。技を決める、倒す、お決まりのやりとり。ここまではよかった。
 問題はこれらの過程で一切シャッター音がなかったことだ。

「ユティ、今日はカメラ持ってきてないの?」

 レイアが尋ねたことで、ようやくルドガーたちは気づいた。見ればユティの胸にはいつも首から提げているカメラがなかった。三脚ケースもいつも使っている物ではなかった。

「持ってきてない」
『せっかくビシッと撮ってもらおーと思ったのに!』「残念ですぅ」
「現像に出してるの?」
「出してない。部屋に置いてきた」

 誰もがあ然とした。あの、カメラフリークのユースティア・レイシィが、自らカメラを持たずに出歩いた。

「この先も、もう持ち出す予定はない」
「それって……カメラ、やめるってこと?」

 パーティを代表したレイアの問いに対し、ユティは感慨の一欠けも浮かべず首肯した。




「肖像権無視でとにかく撮りまくってたユティが急にカメラを手放すなんてありえない。ましてややめるなんて。絶対に何かあったはずだ」
「今までも同じようにちょくちょく出かけてたからいつもの撮影旅行かと思ったけど、その時点でやめてたんだとしたら……相当長い期間、カメラに触ってないことになるわよ。しかも私たちの前ではそんな兆候一切見せなかった」
「となるとやっぱり思い当たるのは――」
「――キジル海瀑のあれ、よね」

 ルドガーとミラは互いにどんよりと俯いた。

 分史キジル海瀑での海瀑幻魔戦。ユティが骸殻能力者だと明かされたあの任務。
 ルドガーは呪霊術にやられ、ミラはローエンの護衛のためとはいえ直接戦闘には参加できなかった。

「俺も兄さん完璧お荷物だったからなー……あーくそ!」
「それを言うなら私だって、全然援護できなかったもん……あの子が頼りないと思うのも当然かも」
「ミラは一
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