暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
49話「第二次予選 (2)」
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話が聞こえる程度には静まった。皆カエンヌの解説に耳を傾けている。

『そうでしょう。ところが彼その逆を行っている。苦もなく、欠伸を噛み殺しながら』

 画面には、眠そうに欠伸をしているアシュレイの姿がアップで映っていた。一応手で隠しているものの、彼はこちらがズームアップにしていることを知らないのだろう。その目は明らかに「早く終わんねえかな」と語っていた。目は口ほどにものを言うとは、よく言ったものだ。

『狭い空間のあちこちで置きている戦闘を前に、不動の物、あるいは人がいると、むしろそれは目立つのです。鬼ごっこをしている子供たちの中で、1人その場に立ち止まっているようなものだ。目立つでしょ?』

『まあ…そうでしょうか……?』

『ちょっと例がわかりにくいですかね。まあ兎に角彼は意図して気配を荒くしたり、また不意にそれを静めることで周りの気配と同調し、あたかもその場にいないかのようにしているのです。…まあ、それも時間稼ぎでしょうが』

『…そうなんですか?』

 散々その凄さを語られたモナとしては、最後のカエンヌの言葉に思わずガクッとした。知らず言葉にも呆れが入る。

『気配操作は極端に静かな場所や、逆に極端に騒がしいところでないと効果を発揮しません。人数がある程度減ったら、じきに彼も誰かに目をつけられるでしょう。……ほら』

 言葉通り、今画面では初めてアシュレイが他の選手と対峙していた。あれだけの凄技をさらりとやってのけた彼の戦いに皆注目する。が、残念ながらそれは叶わないようだった。

『そこまで!!!』

 画面の向こう、ギルドのスタッフが制止の声を張り上げる。どうやらアシュレイが剣を抜く前に、離れた場所で太刀合ってた者達の決着がついたらしい。
 観客が一斉にため息をついた。その中にはユーゼリアとクオリの姿もある。なんだかんだで結局、アシュレイの戦いを楽しみにしていたのだ。

「…まあ、何はともあれ本戦出場っ。やったわね!」

「アッシュさんに賭けてる人なんていないでしょうし。一体どれだけ儲かるんですかねぇ……」

 ユーゼリアに毒されたのか、クオリが返ってくるときには倍以上になっているであろう金に思いを馳せた。

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