§32 観光旅行と逃亡劇
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突如の事態にらしくもなく悲鳴を上げてしまう。
「怯む姿も美しい……!!」
ゆっくりと起き上がりながら一歩一歩近づいてくる男。一体こいつは何者なのだ!
「ち、近寄るのではありません!! 下がれ下郎!!」
「ぶほっ!」
罵倒するとまた鼻血を吹き出し倒れ―――また起き上がり幽鬼の如く蠢く眼前のナニカ。
「もっと、もっと罵ってください!!」
そして意味不明な事をのたまう、思考回路。千の言語をもってしてもこいつらとは会話出来ないのではないだろうか。いや絶対にこんなやつらとはしたくないが。
「俺にも罵倒の言葉を!!」
「お前ら抜け駆けするんじゃねぇ! 俺を踏んづけてください!」
鼻血を出しながら、目を爛々と輝かせる三人に教主はかつてない恐怖を覚える。武神すら畏れない自分が!
「は、離しなさい!」
「そんなつれないこと言わないで」
後ずさりながら手を振るうも、こちらを掴む少年の手は吸盤の如く吸い付いて離れない。しかも気付けばいつの間にか残りの二人もすぐ近くにいるではないか。まさか、自分に気取られぬように動くとは。この三人只者ではない。ならばこんな茶番に応じる必要もあるまい。武の頂きを目指すものとして、受けて立つ。
「貴様、名のある武芸者ですね!?」
獰猛な笑みを浮かべようとして。
「武芸者ってなんですかお姉さま」
笑みが、凍る。この生物は武芸を知らない……?
「ええぃ、お姉様とこの私を呼ぶのではありません!」
真面目に問いを投げればふざけた答えが返ってくる。肌を確かめるように触ってくる手が気持ち悪い。
「……もう限界です」
己の愚かさを悔やませてやろうと彼女が本気になろうとして。
「……お前たち、そこの人困ってるんだからやめとけ」
「何を言っている草薙、お前に俺たちの気持ちがわかるか!!」
「誰でもいいからそこのお前、この者たちをなんとかしなさい!」
悲鳴じみた怒声を上げる教主。羅濠教主と草薙護堂、二人の出会いは色んな意味で酷かった。
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