§32 観光旅行と逃亡劇
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突出してエルが美少女、とは言い切れないと思うのだけれど。
「まぁ気に入ってもらえて何よりですよ……」
「マスターが決めてくださったものを私が気に入らないとでも?」
「……真顔で言うな恥ずかしいわ」
駄目だ。今日はエルに勝てない。
「ちょっとジンジャエール貰ってくる」
頭を冷やすためにレジに並びに行く。戦略的撤退だ。
「こっちだー!!」
レジに並んでいる間にエルがナンパされていた。そこから始まる逃亡劇。エルの迷惑そうな表情を見るに、数人がかりでしつこく絡んでいるようだから「ちょいと失礼〜、エル、行くよ」と言って連れ出したらこの有様だ。
「……ホント、ついてねぇ」
エルと手を繋いで必死に走る。否、エルに引っ張られて必死に走る。
「ちょっとマスター!!」
数分前まで「こういうのも青春ですよね!」などと笑顔で言っていた名残はどこにもない。エルの声が切羽詰まったものに変化しているがどうしようもない。
「「「まてやゴルァー!!!」」」
「ちょ、ちょっとタンマ……!!」
京の街道を爆走する黎斗と不良達、という構図には残念ながらなりはしない。黎斗が遅いからだ。何事か、と一瞬周囲の視線が集まるも友人同士の微笑ましい交流として見られているらしく笑顔で軽く流される。正直この不良軍団の仲間にカウントされるのは勘弁してほしいのだが、反論する余裕も気力も残っていない。
「はぁ……はぁ……」
「マスターだらしないですよ!?」
呪力で強化しているエルと違って黎斗は強化をしていない。息が上がってもう限界だ。
「ちょっと、ちょっとでいいから休ませて……」
食べて飲んだ直後にコレはキツイ。急激な運動でお腹が痛い。壁に身体を預けて息を整え小休止。
「野郎、何処行った!?」
非常に近くで男の声がする。これは、不味い。このままでは逃げ切れない公算が非常に高い。最悪呪力による強化も視野に入れる。
「強化すると変態速度叩きだすからなぁ。あんま人目を引きたくないんだけど……」
「手加減とか認識阻害とかは駄目なのですか?」
小首を傾げて尋ねてくるエルに返す答えはいかにも「魔王」らしいといえばらしいものだった。
「いや、正直「走るのがかなり早い人」なんて演じたことないからどれくらい呪力使えば良いかわからないし、認識阻害はなぁ……」
黎斗の使う認識阻害とはつまるところステルス迷彩だ。消音機能は、無い。まぁ足音を消すことは自前で出来るのだが……
「ぶっちゃけ呪文ばっかに頼ってちゃダメだと思うんだ」
「もやしの分際で何を言いますか」
即答された。少し泣きたい。
「ホントのトコはさ
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