§31 鬼と人と
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切り裂いた業物。人は其れを童子切安綱、と呼ぶ。左手に持つは、かつて彼の同胞を断ち切った業物。人は其れを鬼切、と呼ぶ。
「……虚無へと還れ。鬼の帝王。ホントは童子切と鬼切じゃなくて蜘蛛切と鬼切の方が良いんだろうけど、ここは雰囲気重視ってことで」
柔らかい物腰だが黎斗の眼光に鋭さが交じる。鋭利な刃が煌めくのと鬼神が半分の長さとなった得物を振り下ろすのはほぼ同時だった。刹那で撃ち合うこと数十合。
「ちぃっ!!」
耳をつんざくような金切音と共に、鉄棒は塵芥と化して砕け散る。細断された破片がキラキラと宙を舞う。一瞬だけだが、鬼神の視界を欠片が遮り黎斗の姿を覆い隠す。その刹那で勝敗を決める。
「はぁッ!!」
まずは一撃。左手で胴薙ぎ。鬼切は、鬼神の腹を捉えて切り裂いた。そして二撃。返す刀で切り上げる。
「ぐぅぅ……!!」
押し込まれ後退する鬼神を追撃し、蹴撃。加えて右手の剣を振るう。体勢を整えさせる暇など与えない。
「三のっ、払いッ!!」
童子切を右上から振り下ろす。回避すること敵わず、斬撃全てをその身に受けた鬼の王の体躯は見るも無残な傷が増えていく。
「まだだ!!」
これだけ傷を受けてもなお抵抗する鬼神の、腕が神速でこちらへ迫る。神殺しすら容易く握りつぶすであろうその暴虐な力も、当たらなければ意味などない。
「いい加減、倒れてよ!」
開いた掌に左手の鬼切を全力で突く。寸分違わず撃ち込まれた刃は、鬼神の腕を大樹へと縫い付ける。刀を持つ手もあまりの衝撃に潰れてしまう。叩きつけようと振り下ろされる左腕は、童子切安綱を持つ黎斗にとってなんら脅威足り得ない。彼が右腕を動かすと同時に、肘から先は無数の斬撃をしっかりと浴び肉片となって飛び散った。
「はぁ、はぁ……」
「……」
突きの反動で潰れた左腕を再生し、息も絶え絶えな酒呑童子に止めを刺そうとして????大鬼神が豪快な性格であったことを思い出す。
「僕からの餞別だ。とっておきを、くれてやる」
再びアーリマン経由で護堂の力を発動。山羊の力で雷を呼び出す。カイムの力で植物の意思をかき集める(といっても近場に生命はなくだいぶ遠くからなのでかなり減衰しているが)。これを、八雷神に上乗せする。全ての龍を、右手に集束。
「ウルスラグナとカイムと八雷神のトリプルコンボ、多分相当痛いよコレ」
零距離でならば権能を使っても大丈夫だろう。もう決着はついたも同然だし。
「さて、またいずれ会う日まで」
別れの宣告と共に、抜き手。右腕に宿した八匹の龍が酒呑童子の肉体を貪っていく。高電圧と凄まじい熱量を保有する彼らは、存在するだけで周囲の空間を歪ませて爆発を巻き起こす
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