§31 鬼と人と
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。だがそれで勝てる程甘い相手か? 眼前の鬼神は。
「そもそも付き合ってやるって言っちゃったしなぁ…… しゃあない、殴り合い宇宙と洒落込みますか」
だまし討ちで敗北した鬼神。闘争を求め、その果てに己が全力を振るうことが終ぞ叶わなかった哀しき鬼王。それを思う。理性が消滅し同等の存在との殺し合いが出来なくなることを畏れ、傷が癒えるまで幽世に引きこもる。その闘志に敬意を表し(もっとも敬意を表していても真似しようとは思わないし傍迷惑な闘志だと思ってはいるのだが)応えてやろう、と珍しく熱血展開に黎斗が入る。
「どうせなら、最期まで我儘に付き合ってやるかね」
幽世ならば、被害が周囲に出ることは無い。遠距離権能抜きで雌雄を決する、もっともこれは黎斗個人のエゴであり、相手がそれを望んでいるかはわからない。その時の気分でこんなことをやるのだから、自分も相当歪んでいるな、と苦笑する。影から取り出すは投擲用の剣の数々。飛び道具はアリだろう。相手だって丸太とか投げてるし。
「さて、いくぞ大将」
「こいや小僧!!」
初手から最大加速、すれ違いざまに死角から投げつける無数の剣は、酒呑童子の肉体に触れた瞬間に熔解していく。
「やっぱダメか。認識していなくても発動するとかちょいとばかし面倒だな」
反撃で振るわれる金棒を避けるが、次いで襲ってくる衝撃波の勢いは殺しきれなかった。後ろに吹き飛ばされ出来た隙を逃さぬように、鬼神は追撃の手を増していく。フランベルジュを取り出し金棒を切り裂こうと試みるも、肉体と同様触れるだけで熔解する。
「これなら!!」
左手を翳して障壁を作成。マモンの権能で空気を金属化、銀の楯を作り呪力を流し強化する。触媒としてうってつけの銀ならばあるいは。その目論見は、見るも無残に打ち砕かれる。
「弱い楯など見せるなァ!!」
一撃。まるでなかったかのように、銀の防護壁は掻き消され、金棒は黎斗の身体を吹き飛ばす。
「!?」
全身を粉微塵にされなすすべなく飛ばされる黎斗だが、大地に激突する瞬間には再生し受け身をとることに成功する。粉微塵にされた際に仕掛けたワイヤーも、屈強な肉体の前では役に立たなかった。彼の足元に散乱している引きちぎられた残骸が、それをはっきりと示している。だが、再生するまでの時間を稼ぐことには辛くも成功した。
「どうしたどうした神殺し!? スサノオと殺りあった力はその程度か!?」
鬼神の俊敏な動きは迷う暇も与えてくれない。角が五つに目が十五。異形の怪物と化した彼の攻撃は苛烈を極める。
「ワイヤーは熔解していない。熔解する条件はなんだ?」
突進してくる酒呑童子。振り下ろされる鉄
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