十四 憂虞
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した。
「アパートに出入りするのは変わらないが、次からはココに寝泊まりしてくれ。アパートよりこっちのほうが住みやすいだろう」
「そりゃありがたいけど…本当にいいのか?」
暗に横島の身を心配しているのだろう月代に、横島は申し訳なさそうに尋ねる。
今までアパートに横島を住まわせていたのは彼をまだ信頼していなかったという事も関係あるのだが、月代はそうは言わずに無言で佇んでいた。
了承し頷いた横島を目で確認すると、彼はおもむろに狐面をつける。
「詳しい事は…」
「…―――――あの………?」
「眼が覚めたみたいだから今話す」
急に第三者に声を掛けられ飛び上がった横島の隣で、全く動じていない月代がソファーへと眼を向ける。突如声を掛けてきた男が上半身だけ起こしながらこちらを凝視していた。
「一体ココは……貴方方は…」
「月光ハヤテだな」
ピリリとした冷たい空気が部屋を支配する。先ほどまで横島と会話していた雰囲気とは違い、厳かな態度で月代は口を開いた。
「あ、暗部総隊長!?」
信じられないといった風情で男――ハヤテは眼を見開く。顔を晒していないのに面だけでわかるもんなのかと月代の後ろに佇んでいた横島は思った。
「……暗部総隊長、月代様ですよね…?」
「そうだ。よくわかったな」
「わかりますよ、ゴホ…狐面を被るのは貴方以外にいませんからね」
驚愕の色を滲ませながら答えるハヤテに、月代は暫し何か考え込んでいる。やがて彼は淡々とした口調で彼を促した。
「月光ハヤテ。お前は屋根で血濡れの状態だった。何があった……?」
「え…あ!至急火影様にお知らせしなければならない事が……っ」
「俺から報告しよう。話せ」
「し、しかし………」
横島のほうをチラリと窺い見るハヤテ。その視線から場の空気を読んだ横島はその場から離れようとする。けれど、狐面から垣間見える蒼の瞳がそれを許さなかった。
「いいんだ」
「は……」
「彼は、いいんだ」
頑なに繰り返す月代に、戸惑いながらもハヤテは砂と音の会合の件を口にする。それでいて総隊長にそこまで言わしめるこの若い青年は何者なのだろうと、彼は思い巡らしていた。
「どうやら、懐かしい木の葉が里に戻ってきたようじゃな」
休憩がてらに外へ涼みに出た火影は、屋上にて木の葉の里を俯瞰していた。そうして何の前触れも無く独り言にしては大きな声を口にする。その呼び掛けに屋上の空気がじわりと滲んだ。
「……懐かしい木の葉ね…でもそれは、もはや若葉ではない」
「わかっておる」
ふぅ〜と煙管から吸い込んだ煙を火影はゆっくり吐き出す。火影の傍には何時の間にか、棚引く白煙を鬱陶しそうに仰いでいる子どもが佇んでいた。
狐
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