十四 憂虞
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この人、お前の知り合いなんじゃねえのかよ。お前の仲間なんじゃないのかよ」
畳み掛けるように言ったが、目の前の美青年はただ無言で頭を振る。
再び言葉をぶつけようとした横島は無表情で佇む月代を見て、口を噤んだ。
「……ところでココはどこなんだ?」
沈黙に耐え切れなくてきょろりと横島は周囲を見渡す。明らかにいつも出入りしているあのアパートじゃない。屋敷と呼んでも過言ではない立派な宅地に横島は目を瞬かせた。
「森の奥にある俺の家だ。アパートの物置部屋と術で繋げたんだ……結界で覆っているからこの屋敷を知る者は今日で四人と二匹だな」
「四人…?」
「俺と火影のじじいとそこの男……それにお前だ」
ソファーに横たわる男の意識がないのを確認しながら月代は淡々と答える。その答えに横島は驚いた。自分も含まれている事に対してどこかむず痒さを覚える。
「じゃあ二匹ってのは……?」
「ああ。まだ紹介してなかったか」
今気づいたかのように、月代は輪にした親指と人差し指を咥え指笛を吹く。
耳を澄まさないと聞こえないほどの微かな指笛。
黙って何かを待つ彼に首を傾げていた横島は、突然家の窓から跳び込んできたモノに酷く驚いた。
「ちょ、狼!?」
光の加減で銀色に見える毛並みの持ち主は白い狼。狼というより虎並みの大きさを持つソレは横島を警戒し唸り声を上げている。
「破璃」
月代の一言で、狼の剥き出しの警戒心が薄れた。悠然としっぽを振りながら彼の足下へ近づくと、狼は従順に月代を見上げる。
「コイツが破璃。この屋敷の門番を任せている…そして、一度会った事あるだろうが」
月代の言葉を遮るように、狼が跳び込んできた窓からバサバサという羽音が聞こえてきた。
すうっと横島の眼前を横切り月代の肩に止まったのは、雪のような白い腹に浅葱色の美しい羽を持つ鷹か隼ほどの大きさの鳥。
「あ、そいつ…」
「コイツは瑠璃。火影の手紙同様、暗部任務や召集の際に俺へ知らせてくれる」
そう言いながら狼―破璃と鳥―瑠璃の喉を軽く撫でる月代。いつもの無表情だが眼だけはとても優しい色をしている事に横島は気づいた。
「…なんか、普通の鳥と狼には見えねえんだけど…」
マジマジと瑠璃と破璃を見ながら言うと、月代は一瞬苦々しい表情を浮かべる。
「瑠璃と破璃に会ったのはある研究施設だ」
「え?」
「動物を合成させた兵器の作製――ーつまりキメラだな。俺は任務でその施設ごとの抹消を任された」
どうも尾獣に対抗できる兵器をつくろうとしたらしく、極秘と偽って里の規約に反する研究を続けていたらしい。火影すら知り得なかったこの事実を当時暗部に入ったばかりの月代が暴き、その研究施設をつきとめた。
早速火影に、施設と関わっていた者達は消し研究の実験体は
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