32,いつか、また……
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そしてそれ以上に印象的なお髭付きの顔は間違えようがない。
俺を助けようとして死にかけた――俺の相棒、鼠のアルゴその人だ。
「クロウ、あの人って前に言っていた人?」
「ああ、そうだな」
ふうん、とサチがアルゴを上から下まで眺めて意味ありげな微笑を浮かべた。
それはさっきまでの痛々しいほど引きつった笑みではなく、とても穏やかで自然な笑顔。
「じゃあ、またな。キリトは任せろ」
「うん、また今度。ケイタと私のことは心配しないで」
二人同時に背中合わせに歩きだした。
振り返ることはしない。
橋の下から出て浴びる夕日は赤々と輝いていて、妙に目頭に染みた。
ゆっくりとアルゴの方へと歩いて行く。
会うのは、いや話をするのもきっと25層での一件以来か。
逃げるように最前線からいなくなって、その後はメッセージでも直接会いに来ても全て躱し続けた。
キリトがここに来たのだから、俺の情報はきっと聞いている筈だけど、自分の口からキチンと説明したい。
「――待たせたな。相棒」
「待たせすぎダヨ。オイラがどれだけ待ったと思ってるんダ」
――のだけど、どうやらまともに謝らせてもくれないらしい。
数秒、金魚みたいに口をパクパクと動かしてから、意を決して口を開いた。
「悪かったよ」
「いいヨ」
予想に反した言葉に、俺は続けて用意していた言葉を飲み込んだ。
目の前の鼠は小さくトレードマークの髭を擦ってから、再度口を開く。
「だから、許すって言ったんダ」
「許すって、お前…」
「キー坊からある程度のことは聞いてるシな。言いたいことはあるけど、オイラはクロちゃんが戻ってくるならそれでいーヨ」
そう言ってアルゴは手を後ろで組み、真面目な顔で平然と言った。
「だって、これからは強くなって守ってくれるんだロ?相棒」
「当たり前だろ――相棒」
ここまで、無条件に信じてもらって、期待なんて裏切れるか。
俺達は、一度だけ笑って肩を並べて歩き出した。
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