32,いつか、また……
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なシステムアナウンスにはキリトが強制退会されたことをご丁寧に教えてくれた。
「嫌だよ、キリト。ねぇ、戻ってきてよ。やだよ、ケイタ……キリト!!!!」
サチが子供のようにイヤイヤと首を振る。涙混じりの叫び声にキリトはそれでも足を止めないし、ケイタは壊れた表情で空を見つめたままだ。
キリトがとうとう俺の横をすり抜けて、扉の前までやってきた。
その扉を出れば、もう和解の機会はないだろう。
もう一度この部屋に入るには、ギルドの一員であるかギルドリーダーからの許可が必要だ。そんな物はおそらく二度と得られないだろう。
キリトはゆっくりと扉に手をかけ、振り返らずに言った。
「――サチ、ケイタ。今まで、楽しかった。ごめんな」
ガタンという音とともに、一陣の風が吹き込んできた。
サチは一瞬だけ凍り付き、そして俺の横を走り去った。だけど、本気のキリトが相手じゃ追いつけるわけがない。
ケイタは、その声に一度だけ苦しそうに顔を歪めた。そして、そのまま目の前のウィンドウを操作する。
二度目の破砕音が俺の頭上で響く。当然の流れだ――俺だって、れっきとしたビーターなんだから。
「お前もだよ、旋風。ふざけんな。本当は僕なんかよりずっと強いなんて……ふざけんなよ……」
その後の言葉は聞き取れなかった。
床に手を付いたまま、獣のようにケイタが吠える。
俺には今のケイタを救える言葉なんて無い。
俺が最初っから戦えれば、違う結末があったはずだ。
俺が買い物をしにいかなければ、もっと救えたはずだ。
俺がしっかりとレベルを上げていれば、みんな生きていたはずなんだ。
――俺が、月夜の黒猫団に関わらなければ、皆は生きていたのかもしれない。
それは、終わることのない過去の可能性探し。
未来がどうなるかなんて誰にもわからないからこそ、俺達は頭のなかで必死に都合のいい未来を作ってしまう。
だけど、そんなifは絶対にやっては来ない。
俺は、静かにドアへと向かって歩き出した。
ケイタは未だに動く気配を見せない。
俺が動き出せたからといって、ケイタが絶望しすぎなわけでも、俺が薄情ってワケじゃない。
この動き出しの違いは単純に回数の違いだ。
誰かに死なれて絶望したって、世界が何もしてくれないのを俺はイヤというほどよくわかってる。
生者を救うのは、祈りでも、懺悔でも、ましてや絶望でもない。
「ケイタ、悪い。それと――皆と一緒にいれて本当に楽しかったぜ」
――救えるのは、生者だけだ。
探し人は、すぐに見つかった。数ヵ月前に泣いていた橋の下で、たった独りで壁にもたれ掛かって待っていた。
俺が、近づくとサチはこちらに気がついて顔をあげ、そしてその顔に影を落とした。
俺の頭上に
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