第九話 幼児期H
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そういえば、お礼はぜひご家族でご来店を、と笑顔で言われたな。サービス券ももらった。強かだ。
「よーし、もうひと踏ん張りしますかぁ!」
「『オォー!』」
俺たちは拳を振り上げ、目的地に向かって意気込んだ。
「ほらほら、母さんも」
『いやいや、ほらって…』
「え、えぇ? お、おー?」
『やるんかい』
俺、母さんのそういうところ好きだよ。
******
今日は転移を使わず、家からちょっと遠い山道をお出かけしている。遠出をすることもできたが、今回は近場の方がいいかと考えたからだ。気疲れもしないし、母さんの気分転換にもなるかなと思った。
ここは『クルメア』と呼ばれる地名で、自然豊かな山々が連なっている。野生の動物もいるが、観光客も多いこの山道に姿を現すことはほとんどない。遠目に鳥やたぬきのようなものは見えることもあるらしいが、奥に入らない限り遭遇することはないだろう。
そんな自然で溢れる場所へ、5歳になった俺たちはピクニックにやってきた。俺がこの世界に産まれて5年目の日。始まりでもあり、終わりでもある年。正直複雑な気持ちではある。
だけど、今日は心から楽しもうと俺は思っている。母さんはこの1日を必ず一緒に祝ってくれる。無理はしなくていい、と伝えたことはあるが、母さんは大丈夫とただ微笑むだけだ。それなら、せめて思いっきり遊んで楽しむべきだろう。母さんのためにも、俺たちのためにもね。
というわけで、お弁当食い終わったので家族で遊ぶことにしました。
「お兄ちゃん、動物さんさがそうよ」
「動物か。ここらで見れるとしたら、鳥とか小型の動物だろうな」
「2人とも、森の奥には行っちゃだめよ。道も危ないし、危険な動物だっているからね」
母さんの言葉に、妹と一緒に返事をする。しかし、探すにしてもあんまり期待はできそうにないな。普通にきょろきょろ歩いているだけで、動物を見つけるのは困難だろう。
「そんな訳で君の出番だ、コーラル君」
『サーチですか? サーチャーぐらい頑張れば、ますたーもできると思うのですけど』
「この辺りにいる?」
『相変わらずスルーしますね。ちょっと待ってて下さい』
コーラルが円を発動した。
『あ、ここから50メートル先の木の上に反応がありました』
「猿だ!」
「鳥さんだ!」
『いや、反応があっただけで何かまでは…』
「頑張れ」
『いやいやいや』
根性論は駄目らしい。せっかくなのでみんなで見に行くことにしました。
しかし、人の気配を敏感に感じ取ったのか、あと数メートルでバササッ、と逃げられた。気を取り直して何回か探してみたが、同じように逃げられる。あがっていくフラストレーション。
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