Episode 3 デリバリー始めました
スイートは爆発だ!
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いニャ!! げ、ケホッケホッ」
「あはははは! 馬っ鹿でー!」
調子にのって何度も息を吸ううちに大きな埃でも吸い込んだのであろう。
テリアが激しく咳き込む光景を見て、キシリアが腹を抱える。
「ひ、ひどい目にあったニャ」
隣の部屋にあったために生き残っていた水差しから直接口をつけて水を飲むと、テリアはようやく人心地ついたようでため息を吐いた。
「とりあえず今の現象を解説しておこうか」
「別にいらんニャ」
「まぁ、聞け」
聞きたくないといわれて黙るようならば、最初から声をかけるはずもない。
「デンプンをアミラーゼで分解すると、麦芽糖っていう甘い粘液に変わるんだ。 一般的には水飴って言うが、漢方や薬膳では"飴糖"って呼んでいる」
そう言いながらキシリアが指を鳴らすと、舞い上がっていた埃が一瞬に消えうせて、部屋が元の様子を取り戻す。
割れた窓ガラスですら、今の合図で全て修復が完了されていた。
言うまでもなく、シルキーのもつ屋敷保全の理力が働いた結果である。
違いがあるとすれば、砕け散った釜の残骸がそこにあることぐらいだろうか?
基本的にこの家の中のものは、キシリアの強烈な理力で24時間保護されており、その強度たるや、若いドラゴンに襲われた程度では傷一つ付きはしないほどである。
むろん、キシリアが家の守護者たるシルキーとしてもかなり上位の理力を持っているからこその強度ではあるが。
おしむらくは、きわめて高い理力強度に反して、熟練度があまりにも低いことだろうか。
逆に言えば、それだけの強度を持つ釜が、修復不可能なレベルで消し飛んでいるという事だ。
何の備えもなく爆心地にいたならば、髪の毛一本残らず消し飛んでいることだろう。
「御託はいいから、とりあえず消し飛んだ飴糖をどうするニャ? ま、まさか……」
「当然、もう一度作り直すに決まってるだろ」
何を今更という風情で首をかしげるキシリアに、テリアは全身の毛を逆立てて拒絶を示す。
「さ、さいならだニャー!」
「逃がすか、馬鹿猫」
逃げようとしたテリアを、キシリアがむんずと掴みあげる。
「は、離せ! 離してだニャ! ひき肉を食べるのは好きだけど、ひき肉になるのはいやだニャー!!」
「やかましい! ゴチャゴチャ言わずにさっさと麦を発芽させてこい!!」
奴隷契約を強制されているテリアが、主であるキシリアに逆らうことが出来ないことを悟ったのは、それから30分後のことである。
結局、その日……都市国家ビェンスノゥの郊外では5回の爆発が確認された。
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