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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十七話  休戦か和平か
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だった……。

エーレンベルクが何かを言いかけ口を噤んだ。そして他の二人に視線を向けた。
「……私は陛下の御意志に従う事に決めた、反乱軍、いや自由惑星同盟と和を結ぶ……」
二人が黙って頷く。それを見てエーレンベルクがこちらに視線を向けた。
「軍は陛下の御意志に従うとお伝えください」
「分かった、そのように伝えよう……」

三人が退出した後、わしとリッテンハイム侯はソファーに並んで座っていた。軍の協力が得られる事の安堵感、そして一仕事終えた後の疲労感が身体を包む……。結局誰一人としてコーヒーを飲まなかった。そんな余裕は誰にもなかった……、やれやれだな。これからもこんな緊張が続くのか……。

「取り敢えず一つ終わった。次は貴族達だな、公」
「そうなるな、クロプシュトック侯の反乱の鎮圧は時間の問題だそうだ。連中、もうすぐ戻って来るだろう」
お互い顔は合わせない、正面を向いたままだ。

「連中を反乱軍にぶつけるか……」
「説得は無理、押さえつける事も難しい、となれば死地に送って潰すほかは有るまい」
「……どのくらい死ぬかな?」
「さあ、見当もつかんな」

どれほどの人間が死ぬのか……。五百万か、或いは一千万を超えるのか……。帝国五百年の負の遺産、何とも重いものだ。そしてそれを行おうとする我らの罪深さ……。多くの人間が我らを責めるだろう。言い訳はするまい、する事に意味があるとも思えん。罪は誰よりも自分が分かっている。

「フレーゲル男爵はどうされる、オーディンに留めるのか」
「いや、あれも送り出す。そうでなければ皆が不審に思うだろう」
リッテンハイム侯がこちらに視線を向けた。
「そうか……。辛い事だな、公」
「……」

可愛がった甥ではある。だが私情は挟めぬ。あれの性質では必ず出撃を望むだろう。望み通り死地に送る、フレーゲルよ、死んで帝国再生のために肥やしとなれ……。おそらくお前は死の間際になってわしを恨むだろう。だがわしは許しは請わぬ、お前のために涙も流さぬ。恨むがよい……。

「最近リヒテンラーデ侯の事をしきりに思い出すようになった」
「……」
「生きている時は何とも目障りな老人だったが苦労していたのだろうな、我らを抑えてよく帝国を纏めていたものだ」
リッテンハイム侯に視線を向けた。侯は正面を向いて懐かしそうな表情をしている。見てはいけないものを見た様な気がした。正面に視線を戻した。

「……生きていれば、そう思うのかな、リッテンハイム侯」
「うむ」
「そうか……、死ぬなよ、侯。わしはそんな風に侯を思い出したくはない」
「……公も死ぬなよ、懐かしむのは一人で十分だ」
アマーリエに軍の事を報告しなければならんな。しかし、もう少しこうしていよう。何時か、二人でこの日の事を話せるはずだ、互いに苦
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