反転した世界にて5
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分に知っていた。
『そうやって舞い上がんのもいいけどさ。赤沢さんがどう思ってるかもちゃんと考えなさいよ』
「……わかってるわよ。そんなこと……」
うとうとと、気だるげな眠気が彼女を包み込んでいく。
明日の朝には、こんな気分も忘れて、元気な自分に戻っていることを信じて。
「……おやすみ」
最後に、携帯の電源を切りながら――そこに映る拓郎の写真を指で一撫でして、翔子は眠りについた。
◇
「……はぁ」
翌朝。
教室。自分の机に頬杖をついて、どことなく見つめるようにしながら、翔子は小さくため息をつく。
今朝はいつもよりもかなり早い時間だ。朝、早くに目覚めてしまった彼女は、逸る心と冴える目を抑えることができずに、家から出てしまったのだ。
そして、拓郎がまだ登校していないという事実に少なからず落胆を覚えた。
「……うぅ」
時間が経てばたつほどに。胸中に燻る不安はどんどん降り積もっていく。
――彼のような高嶺の花が、わざわざ自分なんぞにお弁当をこさえてくれるはずがない。
けれどそれ以上に、期待してしまう自分が憎らしい。
裏切られて傷つくなら、最初から期待しなければいいのに。――およそ、普段の彼女らしからぬネガティブな思考が、彼女を支配しかける。
――そんなもやもやは、しかし、拓郎の声が翔子の耳に届いた瞬間、その途端に、一瞬で霧散してしまうのであった。
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