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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
第一巻
【第二十九話】
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「……まあ無理には聞かないさ、これが」


 そうセシリアに伝えると、俺はまた歩き始めた。


「……ヒルトさんには、わたくしの両親の話をしたかしら?」

「ん? いや、聞いてないな」


 俺がそう答え、暫くすると重い口調で、セシリアは口を開く。


「……わたくしの父は、いつも母の顔色ばかり伺う人でした」

「……? そうなのか?」

「えぇ、父は名家に婿入りしたのですが……。 それが母に多くの引け目を感じていたのだと思います。 幼少の頃から、わたくしはそんな父を見て育ったのですから」

「……成る程」


 相づちをうつように、小さく頷く俺。

 そんな俺の反応を見ながらセシリアは言葉を紡いでいく――。


「そして、ISが世界に発表されてからは、父の母に対する態度は益々弱くなっていきましたの……。 そんな母も、どこかそれが鬱陶しそうで、父との会話拒んでいるようでした……」


 きゅっと、セシリアの手に力が込められた。


「……母は強い人でした。 女尊男卑社会以前から、女性でありながらいくつもの会社を経営し、成功を収めた人でした……。 そして、厳しい人であり、わたくしの憧れの人でした」


 ……『でした』?


「セシリア、でしたって過去形だが、今は……?」

「……三年前に、事故で……」

「……悪い、知らなかったとはいえ、俺なんかが聞ける内容じゃなかったな」

「い、いえ。 わたくしが勝手に話した事ですから。 ヒルトさんは気にしないでくださいな……」


 ――とは言うものの、俺が聞いたも同然だからな……。

 そんな風に考え込んでいると、再度セシリアは口を開いた。


「……そんな父ですが、幼少の時にわたくしが椅子で疲れて寝入ってる時に、おぶってくれたことがありましたの。 ――今、ヒルトさんにおぶられて……その頃の事を今不意に思い出したのですわ」


 そのセシリアの声には、何処か寂しげで、懐かしがるような――表現が難しいのだが、そんな感じがした。


「――まあ、俺にはセシリアの両親が互いをどう思っていたのか、よくわからないが。 ――セシリアのお母さんは、本当はお父さんにもっとしっかりしてほしかったんじゃないかな?」

「え……?」


 驚いたような声を上げたセシリアを他所に、俺は言葉を続ける――。


「あ、まぁ俺の勝手な想像なんだがな。 名家とか、婿入りとかに縛られずにさ。 自分の夫として、セシリアの父親として――セシリアから見たら、セシリアのお母さんはお父さんを煩わしく思えたかもしれないが、案外……本心は今言った通りなんじゃないのかなって、俺は思うんだよ」


 ――本当にこれは、俺の勝
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