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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
第一巻
【第二十九話】
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 流石に置いていく訳にはいかず、セシリアをおぶり、荷物が全て手提げ袋だったので手に持ちながら学園への道を歩いていく。

 俺の荷物は、駅のロッカーに入れておいた、後日取りに行けば問題ないしな、これが。


「んん……ん…っ。 ――あら……わたくし……」

「おっ? 起きたか、セシリア?」


 首を振り向けると、思った以上にセシリアの顔が近く、心臓が早鐘を打つぐらいドクンッドクンッと鼓動した。


「ヒルトさん。 わたくし……寝ていましたの…?」

「お、おぅ。 もうびっくりするぐらい大口を開けながら寝てたぜ?」

「えぇっ!? ――わ、わたくし、そんなはしたない寝かたをしていたのですかっ!?」


 気恥ずかしさなのか、おぶられてもたれ掛かりながらもセシリアは両手で顔を隠す。

 顔は見えないが、思わず俺は笑いを我慢できず――。


「ぷっ。 ――はははっ♪ セシリア、冗談だよ冗談っ♪」

「〜〜〜〜っ!? ひ、ヒルトさん! 意地悪ですわっ!?」


 ポカポカ――そんな効果音が聞こえてくるような――両手で交互に、痛くないようにセシリアが肩や背中を叩いてきた。

 端から見ると微笑ましい――そんな光景だろう。


「いたたっ。 わ、悪かったって」

「もぅっ! 知りませんわ!!」


 怒ってるのか拗ねてるのか、俺にはわからなかったが――。

 ただ、セシリアもこんな風な一面があるってのに少し驚きつつも、セシリアをおぶりながら歩き続ける。


「あ、あの……ヒルトさん……?」

「……? どうした?」


 何だかセシリアの様子が少しおかしい気がする――。


「そ、そろそろ……降ろしていただけませんか?」


 ……そういや、おぶりっぱなしだったな。

 まあ特別セシリアが重いとか思わなかったが――降ろしてほしいというなら断る理由もない。


「了解――」


 そう言い、屈むと急にセシリアが――。


「あ――ち、ちょっと待ってくださいな」


 その声に反応し、その場で止まって顔をセシリアの方へ向けると――。


「や、やはり……もう少しだけお願いしますわ……」

「……? 了解、ならしっかり掴まってろよ?」


 俺はセシリアにそう伝えると、再度セシリアをおぶり直す。

そして、またゆっくりと歩き始めた。


「……こうやって殿方におぶられるのって……久しぶりですわ」


 不意にセシリアが呟く、俺は久しぶりという言葉に引っ掛かり、問い直した。


「久しぶりにおぶられるって??」

「あ――い、いえ……何でもありませんわ」


 ――言いたくないことなのか?

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