第五十四話
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土にするのが目的で使ったとしか思えないやり方は、手段を選ばず戦争を引き起こそうとする並々ならぬ決意の現れとさえ思えた……
事態の収拾や復旧に数日過ごす中、望楼からどこかの軍勢のような物が見えると知らせがあり、一気に緊迫した事態となった。
各員に緊急事態を告げるよう指示を出し、詰所に寄ってレイミアにはここでしっかり構えていてくれと告げ、抱き寄せてから口づけを交わした。
「……さぁ、いっといで」
手指までは靭帯を傷つけられておらず指で俺を押しやると、彼女は微笑んだ。
左右両腕を三角巾で吊っているのは、僅かに残った腱や靭帯を保護したりするためで、リハビリ時間以外はそうしている。
肩からガウンをかけて三角巾を目立ちにくくしているその様は、腕組みをした俺たちの指揮官みたいに見えるのは贔屓目だろうか。
新調したいくつかの装備を引っ掴み、出がけにもう一度だけ口づけを交わすと城壁を目指して俺は駆けた。
城壁に登り、軍勢を確認するとどうにも違和感が……いや、あれは!
見知った旗印を見て俺は警戒感を数ランク落とした。
装っている恐れがあるとはいえ、あれはシアルフィの軍旗。
リボーとの戦いに伴い走らせた伝令への答えと見るべきだろう。
それにアイーダ将軍との戦いからまだ日は浅いので彼らにその情報は伝わっていないと思う。
もしものことがあればすぐにでも城門を閉ざす準備をしっかり伝えて、数名を伴い城門の外で彼らからの使者を待ち受けた。
「……こちらはグランベル六公爵家が一つ、シアルフィ家からの使者です。 ミュアハ殿下、お久しいですね」
「これはノイッシュ殿、ご無沙汰しております。 先日の戦で街の中は荒れ果て、軍勢を留める余地がないものでして、しばしの間、貴軍には城外にお留まりいただけないでしょうか」
「わかりました。 あるじにはそう伝えましょう。 それにしても……」
「それにしても?」
「しばらくお目にかからぬ内に、ひとかどの武将のような佇まいにおなりのことと思いまして」
……シアルフィ家に滞在していた頃、彼には訓練をよく付き合ってもらったものだ。
久闊を叙したとはいえ、一度彼には戻っていただき主人の訪いを待つことにした。
久々に会ったシグルド公子は、なによりもまずダーナ市民達の身を案じ、救援物資の搬入を最優先にしてくれた。
率いてきた軍勢には宿営地を築いてその場で待機するよう命じ、自らはわずかな伴を従えたのみで入城した。
グランベルの有力者の子弟である彼のことを紹介すると、今は市長の代行をしている彼の息子をはじめ代理や代行というものがついた有力者達は警戒の色を濃くしたのも致し方ない。
どの程度意味
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