第4話 助っ人は二人の転生者だそうですよ?
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
言葉の調子で独り言を呟く。
尚、これは魏の曹植の創った漢詩の一節。その現代語訳は、
転がり流れ、定住の場所を持たない。
この私の苦しみを、誰が分かってくれると言うのか。……と言うぐらいの意味。
つまり、先ほどハクが発した台詞は、転蓬になぞらえて、ハクが異世界に召喚された自らの境遇を嘆いた、と美月は取ったと言う事。
何故ならば、転蓬とは、流浪する様や、旅人を指す意味の言葉。根無し草の事ですから。
しかし、
「私を召喚した事を悔いる必要は有りませんよ、美月さん」
それまでと変わらない、長閑な雰囲気でそう話し掛けて来るハク。
そして、
「美月さんが私を召喚出来たと言う事は、私と美月さんの間には、某かの縁と言う物が有ったと言う事の証でも有ります」
美月に対して、春の属性の表情を向けながら、そう話し掛けるハク。そして、何故か彼女の周囲だけ、乾いた魔風が春のそよ風と成り、乾燥地帯に相応しい容赦のない陽光が、春の芽吹きをもたらせる陽光へと変わっているかのようで有った。
いや、彼女が宿した神格が龍。それも、青龍の神格ならば、その可能性も有りましたか。
何故ならば、青龍が支配するのは春。彼女の周囲に満ちる春の陽気は、彼女が宿した神格を指し示しているのかも知れませんから。
そうして、美月の答えも待たずに、ハクは更に続けて、
「そして、私と強い縁に結ばれた人が苦難に有っているのを知らされずに、更に手助けを出来ずに過ごす事の方が、私は哀しいですから」
……と告げて来た。
そして、今度の台詞は、本当に少しの哀の気を発しながら。
そう。そしてそれは、ハクが美月に召喚されてから初めて発した陰の感情。ずっと、幸せそうに微笑んでいたから、そう言う表情をするしかない、と無理に笑っていた訳では無く、本当に笑っていたと言う事。
そう美月が考えた瞬間。奇妙な……。違和感にも似た何かを感じた。
そして、同じように、周囲に視線を送るハクと視線がぶつかる。
これは……。
「あれが怪しいと思うで」
そして、今までハクと美月のやり取りになど、我関せずの姿勢を貫いて、周囲を警戒しながら二人のやや前方を歩いていた白猫のタマが、やや顎をしゃくるような仕草で、有る方向を指し示す。
其処には……。
魔風に晒され、元は、大木の根本にでも造られていたので有ろうと言う、ささやかな祠が存在していた。
いや、違う。かつて、祠で有った物の残骸が、そこに存在していた、と言い直すべき。
そう。かつては神社のそれを模して居たはずの屋根が傾いで完全に外れて仕舞い、木と紙で作られた扉は破壊され、半分は完全に何処かに失われて仕舞っている。
そして……。
そして
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ