十ニ 傷と痕
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て、横島はわざと軽い口調で話し掛けた。
「ほんと忍者ってのはすげーな。人間技じゃね〜よ」
「…お前の身体能力ならすぐ出来るようになる」
「………いやいやいや…無理だっての」
予想に反した返答に苦笑いで返すと、狐面は小さく溜息をついた。
「夜に出歩くな。俺と少しでも接点があれば先ほどのように目をつけられる……」
「……あんなぁ、お前が悪いんじゃないだろ〜?それに俺はこの里―…いや世界自体違うからさ、目つけられるのは仕方ないんじゃね?」
横島はカラカラと笑う。それを見た狐面はなぜか苛立った様子で、大木の枝の上に彼を下ろした。本来の姿を成長させた今の狐面の身長は、横島とさほど変わらない。へらへらと笑う横島に対し、狐面は無言で印を結ぶ。白い煙が晴れた後には、狐面を手にしたナルトが立っていた。
「……―――俺に道化を被るなと言っといて、自分は演技を止めないのか」
どこか怒っている風情のナルトに戸惑う。本来の姿に戻ったナルトに身長は勝っているのだが、射抜くような蒼の双眸に見上げられ、横島は思わずたじろいだ。
「…え、どういう意味だよ……」
(自覚なし、か……)
ナルトは二重生活において裏表を使い分けている。それこそドベの振り、下忍と暗部、昼と夜の仕事というように。それは素の自身と演技中の自分の差が激しいためだ。
しかし横島は違う。周囲からの強制から性格をつくった彼は、どこからどこまでが自分でどこからどこまでが横島忠夫という人間像なのかを区別できない。素の自身と道化を被った自分との境がよく掴めていないのだ。それでいて横島忠夫像に拘り過ぎる故に、己の人間像をはかり間違えている。
(俺より厄介だな、コレは………)
動揺している横島にチラリとナルトは視線を投げた。その時月の光に照らされキラキラ光る湖が、彼の視界の端に映る。
なんとなく思い立って、ナルトは再び横島を抱えて大木から飛び降りた。
「お、おいっ!?」
「……湖」
「え?あ、ほんとだ……なんだ?水浴びでもすんのか?」
地に足が着いてほっとしながら、首を傾げる横島。そんな彼の前でナルトは上半身だけ服を脱ぐ。黒を基調とする暗部服はぐっしょり赤黒く濡れていた。
「………………」
それに眉を顰めたナルトは服を水の中に突っ込む。そして無言で湖の畔まで歩いて行ったと思うと、おもむろに足を水面上に乗せた。
「ちょ、おい……って、忍者ってなんでもアリだな」
湖の水面をスタスタ歩くナルトを見て一度驚愕した横島だが、やがて諦めたように頭を振る。
(…そういや俺、ここ一週間風呂入ってなかったな…)
ナルトのアパートには横島のアパートと同じく風呂がない。風呂屋に行く事も頭になかったが、今更になって横島は自分の身体をすんと嗅いだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ