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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その2
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話を聞いたあと、私の武装を取りに工廠に赴いた。貰った装備は、悪くはない。寧ろ良い。新品ではないが、よく整備されている。油漏れも見られない。いい整備士を持っているな、この港は。
「ったりめぇだ。けど、壊しても文句は言うなよ。戦いは、甘くはねえからな」
 老整備士は苦笑すると、他の装備を点検しに戻っていった。
(整備士が良いとなると、俄然やる気が出るな。だが、まだ仲間がいねぇ。どうやって集めたもんか)


 工廠を出て、港を一人歩く。途中に会う艦娘に仲間にならないか尋ねるか、皆からは渋った反応しか返っては来ていない。
『死にたくない』
 尋ねて回る間、初めて仲間に誘った吹雪から返されたその一文が、まだ頭に木霊していた。


 それから二週間が経った。私はどんどん焦りが大きくなっていった。旗艦一人の艦隊、出撃もまだ経験していない。提督に何時ぞやかけられた、鋳潰すぞという言葉が、背中を追いかけてきている気がした。
 そんな折、また不知火と会う機会があった。というか、やっと不知火と会ったというべきか。不知火の宿舎の部屋は、私のすぐ隣であった。第三艦隊所属ということで、出撃と工廠に良く居たために中々会わなかったのだ。
「不知火か、お前はよく出撃しているな、羨ましい」
「羨ましいって、貴方、知ってるわよ。第二艦隊の旗艦らしいじゃない」
「艦隊数一、襲撃回数零の艦隊の旗艦が、羨んじゃいけないか?」
「……詳しい話、聞かせて欲しいのだけど」
 簡単に、不知火に今の状況を教えた。
「なる程ね。だから、貴方簡易装甲しかしていないのね」
「使わない装備をつけていても、痛むだけだ。最低限のメンテナンスだけして、外してる」
「貴方は、今の状況をどう思ってるの?」
「良くは思っていない。当たり前だがな。このままでは一度も出撃せずに鋳潰されるだけだ」
「『駆逐と軽巡を集めて、水雷戦隊を構築。さっさと敵を殴りに行きたい』ね」
「そう、それだ。だが、道のりは長そうだな」
 何人にも話しかけたからか、数人は考える時間を欲しいと言う答えを返してくれているが、そうすぐに集まるとは思っていない。目の前の不知火は、第三艦隊所属、誘うわけにもいかなかった。
「面白そうね、いいわ。私も混ぜてもらえない?」
「え?」
 だから、不知火のこの反応は予想だにしていなかった。
「水雷戦隊、いいじゃないその響き。貴方、来る人拒まずの体なのよね?」
「待て、お前は第三艦隊所属だろ? どうやって参加するってんだ」
「代わりに違う艦でも入ってもらうわ。そろそろ私の艦隊、編成を変えようって話が上がっていたから丁度良かったわ」
「お前の一存で変えられるのか」
「何、簡単よ。提督に『木曾の提案を受け入れ、私も参加いたします』と言うだけでいいもの。吹雪が何を言おうと逆
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