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河童
第三章
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すと殺すわよ馬鹿」
「………こんな田舎の八百屋じゃ、らちがあかん!と。…そこからだったか、なんか変なエンジンが入り始めたのは」
「くそ田舎で悪かったわね馬鹿」
「………で、エンジンのおもむくままに天文館通で白熊食って、桜島大根のこと聞いて、漬物屋に行ったら丁度、漬物メーカーのおじさんが納品に来て」
「そこらへんの流れは知ってるわよ馬鹿」
「…お前、徹頭徹尾、語尾に馬鹿をつける気だな?」
「気にせず続けなさいよ馬鹿」
琴美がドン引き丸出しの笑顔で凍りついてる。沙耶はもう輪から外れてメール打ってる。…こんな馬鹿馬鹿しい下ネタから始まったのか、あの謎の放浪は。こんな奴追いかけて桜島まで渡った私は一体……。さっきは会いたかったと思ったけど、今はもう死ねと思ってる。今すぐ荷台から転げてトラックの後輪で轢かれて死んじゃえ馬―鹿。
「………まぁいい。桜島でこの時期でも食べられる大根を作っているのは、このおじさんだけだと紹介されたわけだ。今、収穫で人手が足りないというので、いくばくかのバイト代と桜島大根一本と引き換えに、労働力を提供する契約を持ちかけた。路銀は稼げるし、大根は手に入るし、一石二鳥!」
「ふーん…で、その大根どうするの。丸かじり?うちの台所は貸さないから」
「実は桜島大根はもう食べた」
「食べた?」
「桜島大根作ってる農家だぞ。3日も泊り込みで仕事してりゃ、賄いで出るわな」
「…どうでした、それだけ追い求めた大根の味は?」
河童は注意深く運転席のおじさんのほうを伺い、小声で答えた。
「…まぁ、大根、だな」
「大根が大根の味するのは当たり前でしょ。いるのよね、噂の『甘み』に期待し過ぎて、食べてみたらフルーツみたいに甘くないんでがっかりする旅行者。そんな甘い大根がお好みだったら甜菜でもかじってればいいのよ」
「…いや、旨かったよ。でも考えてもみろ。泊り込んでた3日間、毎食出るんだぞ、桜島大根が。そりゃ最初は物珍しさも手伝って素直に旨いと思ったけどよ…正直もうげんなりというか、うんざりというか…」
「現物支給でもらったのは、どうするの?」
ちら、と足の間に置かれた桜島大根に目をやる。それは傾きかけて柔らかくなった日差しの下、真珠色の肌をしずかに光らせてた。本当なら、こんな馬鹿に貰われるのはもったいないほどの、いいものなのにね。
「……要る?」
「要らない」
既にお父さんが手配済みだったみたいで、おじさんは私の顔を見た途端に、にっこにこしながら大ぶりの大根を持たせてくれた。これを持って歩くことを想像するだけでげんなりなのに、二つなんてありえない。
「君ら、どう?」
沙耶と琴美に向かって、すべすべ感をアピールするように大根を撫でてみせる。
「要らないー。持って歩いてるの、知り合いに見られたら恥ずかしいもん」
ちょっと待
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