第三章
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「すごいな流迦ちゃん。やっぱり天才だ!」
喉の奥で、ぐびって音がした。…それと同時に、両目からぼろぼろっと涙がこぼれた。…焦って、焦って。でも焦れば焦るほど、涙は止まらなくて、しゃがみこんでしまった。
みんなが何か口々に騒ぎながら取り囲む。そんな声も遠くに聞こえた。
――認めるしかない。私は。
この河童に、会いたかったんだ。
「――天才って言われて、びっくりしただけなんだから」
トラックの荷台に揺られながら、もう何度も口にした言葉を、もう一度繰り返す。
…農家のおじさんが、船までトラックを出してくれるというので、ご厚意に甘えることにした。バスはあと1時間来ないらしいし。
「はい、はい」
河童は枝毛を探すようなそぶりで、こっちを見ないようにしてる。トラックの揺れで枝毛どころじゃないくせに。その気の遣い方が余計に腹立つのよ。
「――両親留守だし、気が張ってて、いろいろ不安定になってただけ!」
「うん、うん」
訳知り顔で頭をぐりぐり撫でて微笑む琴美にも腹立つ。肩透かし〜、とかつまんな〜い、とかぶつぶつ繰り返す沙耶も、それはそれでむかつく。
とにかく、今の私は不機嫌ピークだった。
河童が何か言い出す前に殴ればよかった。ボコボコにして襟首つかんで家に連れ帰ればよかったのよ。そうすれば余計な恥かかないで済んだのに。
「ちょっとひどいんじゃないですかー」
琴美がちょっとたれ気味の目をつりあげ…ているつもりで河童を睨んだ。
「急になんの断りもなく出て行ってー、女の子泣かせてー」
蒸し返すな。空気読め。
「…んー」
河童が目を泳がせて頭のてっぺんをかきむしった。…ふーん、困るとこういう顔するんだ。
「…最初は軽い気持ちで八百屋に行ったんだ」
「その辺の八百屋で、この季節に、桜島大根が買えると?」
だとしたらあきれ果てた大馬鹿だわ。
「鹿児島県民は、毎日普通に桜島大根食ってると思ってたんだよ」
「あんな調理しにくい野菜を普通に食べる家庭なんて滅多にないわよ馬鹿。だいいち冷蔵庫に入りきらないでしょ、馬鹿。常識で考えなさいよ馬鹿馬―鹿」
―――ふんだ、馬―鹿。
「何度も馬鹿馬鹿言うなよ。…とにかく子供一人分くらいあるという巨大な大根をぜひ食べてみたいと思っていた」
「そんなに育っちゃってるのは観賞用よ。食べられたもんじゃないわ馬―鹿。だいいち、そんなの益々冷蔵庫に入らないじゃないの馬鹿めが」
「巨大、大根か…略して巨」「それ以上言ったら車輪の下に叩き落とすわよ大馬鹿野郎」
「……ダチにそんなタイトルの写メを送りたくて送りたくて、居ても立ってもいられなくなった俺は、そこらのスーパーとか八百屋を散々めぐった。しかし、ちっとも見つからないじゃないか!」
「鹿児島の誇りをくだらない下ネタで汚
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