第三章
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んと意気投合してたって噂があった。きっとそれが、仕入先の契約農家のおっさんなんだ。そう言うと、琴美が小さく首を傾げて、少し振った。
「でも農家なんていっぱいあるしー…」
「問題ない。大体特定できたわ。居酒屋の聞き込みは要らない」
「えっ!!」
2人が目を丸くして短く叫んだ。
「あいつ馬鹿だから、この暑いのに、生の桜島大根を探してうろうろしてるみたい。仕入先の契約農家っていうのは、きっと桜島大根よ」
ほんと馬鹿みたい。こんな馬鹿な理由で県内を飛び回る前に、自転車直せ、馬鹿。
「でも、桜島大根作ってる農家だっていっぱいあるし…」
「そのあと、桜島行きのフェリーに乗ってる。いまホントに桜島で桜島大根作ってる農家は、20軒もないわ。…それでも、ちょっと多いわね。もう少し絞り込むわ。ねぇ沙耶、携帯貸して」
「プリーズ」
沙耶が目をキラキラさせて携帯を差し出した。『なんか面白いことになってきた』と思っている目つきだ。琴美は宇宙人でも見るような目をしてる。みごとに引く一歩手前ってかんじ。これ以上本性をさらすと琴美が帰っちゃいそうなので、笑顔で優雅に携帯を受け取り、番号をプッシュした。ぷるるる…ぷるるる…と3回鳴り、聞きなじんだ胴間声が携帯から漏れた。
『あい、狭霧』
「お父さん、私。流〜迦!」
嬉しそうな作り声で、歌うように甘える。
『おぉおぉ、…母さん、流迦から電話ばい。もしもし〜、流迦〜』
電話の向こうで、お父さんが相好を崩すのが手に取るようにわかる。…単純なひと。
『どげんしたとね、お前が電話なんて珍しかねぇ』
「あのね、流迦ね、桜島大根が食べたいの。ちゃんと桜島で育ったのがいい!」
ちょっと舌ったらずなかんじに、ゆっくり喋る。通行人が私を、かわいそうな子を見るような目つきで眺め回し、去っていく。
『…桜島大根?』
お父さんですら、不審に思ったみたい。…そんなに変な子になってるのか、私は。
「早くできるのもあるって、聞いたんだけど…やっぱり、むりかな……」
ちょっと声を詰まらせる。さびしいけど、諦める。そんな声色を意識する。
『…んにゃ、そげんなことなかよ!父さんな、桜島で一軒だけ、イベント用に早生種の桜島大根こさえちょる農家知っちよいけん、いっき人をやって、届けさせるが!』
「わぁい、私、畑見たい!教えて教えて!!」
…馬鹿じゃないかしら。誰が今更そんなもん見たいか。小学校の遠足とかでイヤってほど見たわ。
『あっでー、流迦はもじょかおごじょばい!よかけん、教えるばい』
お父さんが胴間声を張り上げながら読み上げる住所を記憶する。耳が痛い。
『とぜんねが時ゃ、いっでん電話してよかよ!』
…電話が切れたことを確認して、携帯をたたんで返す。
「ありがと」
「おぅ…流迦、まさかの口八丁手八丁ね…」
「私を怒らせ
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