第五章
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第五章
「僕だけなんだ」
皆は一つになっています。けれど男の子は皆から責められて一人だけです。その一人だけということに気付いてしまったのです。
それで寂しくなって傍に誰かいて欲しくて仕方なくなりました。そうして呼ぶのは。
「ママン!」
「ママン!?」
「今ママンって言ったよね」
「うん、言ったね」
皆も今の言葉は確かに聞きました。
「どううやら寂しいみたいだね」
「そうか。一人なんだ」
「こいつは一人なんだ」
このことに気付いたのです。
「一人なら怖くない」
「皆いるんだからな」
「それだったら」
いよいよ男の子に迫ります。そうしてそのうえで遂に。こう言い合うのでした。
「この悪ガキをやっつけよう」
「懲らしめよう」
「容赦しちゃいけない」
遂に皆で男の子を本当にやっつけようというのです。それで完全に取り囲んでそのうえで。その輪をじりじりと狭めていくのでした。
ところがここでリスが言うのでした。
「僕がやるよ」
「えっ、君が?」
「君がやるの?」
「そうだよ。駄目かな」
「その通り、僕がやるよ」
「僕もね」
今度名乗りを挙げたのは茶碗とポットでした。
「さっき投げ付けられたんだから」
「だから御仕置きは僕達がやるよ。いいね」
「ああ、駄目駄目」
今度は時計が出て来ました。
「僕だってこの子には酷い目に逢ったんだからね」
「何だよ。それは僕も同じだよ」
「私もよ」
「僕も」
「私だって」
やかんに絵本のお姫様に壁の絵の羊飼いの男の子と女の子も出て来ました。
「この子にやられたんだよ」
「だから絶対に」
「僕達がやらないと」
「そうよ」
「じゃあ私はどうなるの?」
「僕は?」
今度はトンボと蝙蝠でした。
「恋人を捕まえられているのに」
「それで何もするなっていうの?」
「いや、僕達だって」
「そうよそうよ」
お庭の木々も男の子に対して怒っています。
「やり返したいよ」
「それをするなってどうなの?」
「私だって尻尾を引っ張られたのよ」
最後に猫が言います。
「それで忘れろなんてできないわよ」
「じゃあ僕はどうなるんだよ」
「私は?」
皆誰が男の子をやっつけるのかで喧嘩をはじめました。その間男の子はがたがたと震えているばかりです。けれどここで。
リスが言い争いの中でソファーに跳びかかろうとしてこけてしまいました。そうして石にすりむいて足を怪我してしまいました。
「痛いなあ。参ったよ」
「あっ・・・・・・」
男の子はそれを見て咄嗟にリスのところに来てそうして。首に巻いてあった自分のリボンでその傷に包帯をしてあげたのでした。
男の子は自然にリスの手当てをしてあげたのです。それをした後で皆から責められて怒
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