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形而下の神々
過去と異世界
傭兵という職業
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とはいえ、内容はこれから奴隷として売られる人間の護衛なんだ。子供たちに俺がどうこうしてやる事なんて、どうせ今はまだ出来ないんだ。
 だったらせめて安全な旅を作ってやろうじゃないか!

「ほぉ、タイチが奴隷と聞いても仕事を受けるとはな。それでこそタイチだよ」

 グランシェは少し拍子抜けしたといった風だが、取り合えずはこのまま依頼を受けてみるという方向で話が固まった。
 そこで、依頼を受けるにあたってグランシェからの注意があるとのこと。

「何なんだ?」

 注意があるというから聞き返すと、彼は真剣な面持ちで口を開いた。

「これは俺がこの依頼を選んだ理由にもつながるんだが、輸送の割には雇用人数が30人と人数が多いんだ。身勝手な話だが、最悪の場合にはその場を放棄して逃げることも出来る」
「な、なんと……」

 要は仕事仲間を囮にするという事か。

「セコいかも知れないが、それが俺達の生き残る術だ」

 グランシェは相変わらず真剣な眼差しを向けて来ている。しかしまぁ、納得はできる。今の俺達には力も何もないんだ、そのくらいしか生き残る術はないよな。

「そして実はもう一つ、これを選んだ理由がある」
「どういう意味だ?」

 聞き返すと、彼は今度は少し頬を緩めて答えた。

「この世界の奴隷とはどういったものなのか。それをじかで見れる良い機会だろうと思ってな」

 そうか、奴隷を運ぶんだから奴隷と接触できるという事か。じゃあ彼らがどういう扱いを受けるかも分かるし、どういった立場なのかも分かる。

「敵を知るってやつか」

 俺が呟くと、やはりグランシェは目ざとく返事を返してくる。

「いやいや奴隷制度が敵かどうかはまだ分からんよ。もしかしたら本当に軽いものかも知れんし」

「まぁ……そうかもね」

 グランシェはどうしてそんなに奴隷にこだわるのだろうか。まぁ俺も逆の意味でこだわってはいるのだが。
 と、グランシェは場の空気を切り替えるかのように大きな声を発した。

「さ、そうと決まったら出発の準備だ!!」

 そう言って傭兵屋に入って行く。

 まぁ今更ごちゃごちゃと考えても仕方ない。運ぶモノが奴隷だろうがただの荷物だろうが、依頼主からすりゃあこちらはただの傭兵。

 まだ俺達がどうこう出来る話でもないんだし、今は生き抜く事を考えよう。


 俺はそう心に決め、また自身に言い聞かせるかのように勢い良くグランシェについて行く。

 いつもより少し大きな歩幅で一歩、強く踏み出した。
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