十一 氷解
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そうに頭をかく。
「あ―――……コレ、さ。お粥作ったんだけど……。初めてだからマズイだろうし、その…無理しなくていいからな」
最後は申し訳なさそうにもごもごと言う。そんな横島に、ナルトは目を細めた。
どうやら文珠を手渡す際に言った「ナンパでもしてくる」という軽言は嘘だったようだ。
長い長い記憶旅行は、実際に刻む時の空間ではたったの十分ほどしか経っていない。そんな僅かな時間にナンパと料理の両立など不可能だ。加えて若干火傷を負っている横島の手が、粥作りに必死だったと物語っていた。
ナルトは無言で横島に手を伸ばした。湯気を立てる粥を奪い取るように受け取って、一口口に含む。昔からの癖で、無意識に暫く舌の上で転がした。世話役に毎食毒を盛られたために、どうしてもこの食べ方をしてしまう。しかしながら他人が作ったモノをすすんで食べるのは、ナルトにとって初めての事であった。
水っぽく味気ない味。正直お世辞にもおいしいとは言えないもの。
塩を入れ過ぎているのかしょっぱくて、思わず顔を伏せた。
前髪がさらさらと天幕のように下ろされる。金の睫毛を微かに震わせ、蒼の双眸を隠した。
金の茂みの中で零れ落ちる滴に気づかないふりをし、再び粥を口に含む。
その様子を横島はじっと見ていたが、何も言わなかった。
(…強くなった事で、命を狙われるか……)
行動と心情が対比する横島の映像を思い出しながら心中呟く。ちらりと横島の姿を視界にいれながら、ナルトは自らの過去を思い浮かべた。
里を代表する精鋭部隊―暗部を統括する彼の手は、消えない紅がくっきりこびりついている。ナルトもそのことは百も承知だ。生き永らえたこの十三年、自身の手を汚した回数などとうに忘れている……切りが無いからというより、数えるなど無謀だから。
ナルトが初めて手を汚したのは、暗部に入ってからではない。それよりずっと以前…――火影邸最奥の離れの一室を宛がわれる寸前の事。火影が乳母や教育係を世話役として任せていたあの頃…。
火影も誰も知らない事だが、ある忍びがナルトを殺しにきていた。手練の忍び達が火影邸に忍び込んだのは、実は二度目だったのだ。
その忍びはあまりにも残虐な性格で、それ故暗部を降格され出世の道を閉ざされた者だった。彼は九尾の器を消すことで、再び暗部に復帰しようと考えていた。失地挽回し、あわよくば英雄になれると思っていたのである。
安易な考えに満足し、彼はナルトがいる部屋に忍び込んだ。そして。
返り討ちにあった。
それは突然だった。
急に現れた見知らぬ男に、混乱して。部屋の隅でナルトは小さく縮こまった。
助けは来ない。火影ならいざ知らず、毎日虎視眈眈と命を狙う世話役達が来るはずもない
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