十 道化師は哂う 後編
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として、落書だらけの扉を開ける。これが横島の日常だった。
今でこそスパイ容疑は晴れたものの、未だ半信半疑の一般人の中に放り出された横島。周囲は彼に対して疑念を残し、美神親子には欽慕の念を抱く。言わば[真の英雄]たる横島は日陰の存在であり、美神はいつも太陽の下を陣取っている。それでも別にいいと思えた。道化のふりしてやり過ごすのが一番平和だと、彼は不平不満を言わなかった。しかしながら平和に過ごそうとする横島の前に、神族と魔族が立ちはだかる。
人間を除き、アシュタロスを倒した真の英雄という話は三界で騒ぎ立てられた。
今までにないこの例外に神族と魔族は、彼を庇護する一派と放任する一派、そして抹消する一派と分かれる。
抹消する一派は、?文珠を生成できる彼の力は下手に転ぶとデタント〈緊張緩和〉の崩壊を引き寄せかねない?と判断した。結局は人間を下等とみなす故に神族や魔族の力を凌駕する可能性の芽を摘み取ろうという身勝手な言動なのだが。
けれどその一派により抹殺指令が神魔界に流れ、人間を軽蔑する者達が我先にと彼を襲うようになった。
そんな状況の真っ只中にいながらも横島はGS仲間にすらその事を知らせず、いつも通り馬鹿でお調子者を振舞う一方で、襲い来る彼らの撃退をなんとか繰り返していた。
散々周囲に疑われていた横島は何を信じたらいいのかわからない。人間界では[人類の裏切り者]とされ、神界・魔界からも命を狙われる。一般人ならいっそ死んだほうがマシだと思う状況の中で、彼は道化を被りつつ生きてきた。
横島はどうしても死ぬという逃げに転じる事を良しとしなかった。ルシオラが自らの命と引き換えに救ったこの命を粗末にする事が許せなかった。
それと同時に三界で厄介者扱いされながらも、それでも世界自体を嫌いになれなかった。
ルシオラの犠牲で成り立っている三界を、彼女が救った世界を、どうしても嫌う事が出来なかったのだ。
そうしてなんとかやり過ごしていた日常は、一件の除霊で覆される。
比較的簡単な部類のそれを、上司である美神に丸投げされ、珍しく一人での仕事。
しかし除霊対象は、報告書にあった情報とはまるで違い、遙かに強力なその相手に元々準備不足だったことも加え、彼は圧されていく。
それでも除霊することは出来たのだが、除霊直後の別方向からの強力な攻撃にあえなく撃沈。
攻撃してきた相手の姿に横島は愕然とする。
なんと神族と魔族、両者の姿が彼の眼に映ったのだ。
今まで彼らは己ひとりの手柄を欲するあまりに単身で横島に襲い掛かってきた。それが今回の除霊では両者が手を組んできたのだ。
全ては横島を嘘の報告書で誘き出し、抹消するために。
(…あ―…もういーかな―……)
敵の手から放たれる、回避不可能な霊破
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