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同士との邂逅
十 道化師は哂う 後編
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齢十七歳の身で、世界の命運を握ってしまった。
どこでどう間違えてしまったんだろう。自分は憶病な人間なのだ。厄介事は嫌いだ、関わりたくない、巻き込まれたくない。

それなのに、今こうして展開の中心に立っている。

流されるまま闘って、何度も死にそうな目にあって。
それでも止めなかった。GS関連で知り合った仲間とのやり取りが楽しかった。GSとして仕事する人達に憧れを持った。居心地のよいバイト先から決別したくなかった。

そうだ、ただのバイトだったはずだ。時給250円で雇われ、霊能力が使えるようになっても時給255円の単なる荷物運び。GSという職は勿論オカルト界にも縁が無かった、普通の高校生だったのに。

それがどうしてGS免許をとっている?GS見習いとして仕事する?時給255円に変わりはないのに、どうして必死に俺は―――…


「なんで………俺なんすか…」
『約束したじゃない、アシュ様を倒すって…!それとも―――誰かほかの人にそれをやらせるつもり!?自分の手を汚したくないから―――』
「………っ」
脳裏に浮かんだ彼女が檄を飛ばす。その諭すような言葉に横島は息が詰まった。


確かに自分は彼女に宣言した。
「アシュタロスは、俺が倒す!!!!」と。
その一言を口にした瞬間は、その言葉の意味に重みを感じなかった。その時はまだ傍観者だったから。
けれど今になってその意味がわかる。いざ直面してようやく理解できる。

自分をはらはらしながら見守るGS仲間が羨ましかった。当初は当事者でありながら、今現在傍観者となっている美神が妬ましかった。そして、当事者として自覚がない自分自身に苛立った。

自分を信じてきてくれたルシオラに嘘はつけない。だから自分の言葉に嘘はつけない。
「倒す!!!!」と宣言したからには、その責任を背負わなければならない。


混乱する頭。震える全身。緊張で顎からつうっと汗がつたう。酸素を求める金魚のようにパクパクと口を何度も開閉するが、声に出せたのはヒューヒューという音だけだった。
時が止まったままならいいのに、無情にも時間は刻々と過ぎる。渋れを切らした魔王に再度問われ、頭が真っ白になった。


『コワシテ、ヨコシマ』


脳裏に響いた女性の声に従う。この張り詰めた空気から解放されたかった。
真っ白な脳はコワシテという言葉のみに占められ、瞳が無意識に壊す対象を探す。
左手に持つ青白い球体は息を呑むほど美しく輝き続ける。全く美しさを損なわないその光が、横島には酷く腹立たしかった。

右手の文珠をギュッと握り締める。そうしてソレを、左手から零れ落ちんばかりの球体に押し付けた。













横島はひとり、東京タワーの鉄筋上
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