十 道化師は哂う 後編
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を愛するルシオラと、彼女の消滅する原因ともいえる横島。
一年しか生きられないという三姉妹の運命と、コードに触れれば消滅する話を知った横島は愕然とする。
聡明才女であるルシオラは理解しているのだろう。命の大切さを短さを。人間よりよっぽど。
そんな彼女が自ら消滅する覚悟を決めた。横島への想い故に。
仏道を極めるために身も命も惜しまない事を、不惜身命という。
それなら彼女は愛のために、自身を顧みないというのか。
「俺に…………俺にそんな値打ちなんかねぇよ……っ」
なぜ醜名極まりない自分を、ルシオラが好きになったのか。
愛するという意味も言葉もわからぬ横島にとっては、理解できない。
だが、これだけは断言できる。
一緒にいた時は短えど、異性の中で唯一自分を。
演技をしている横島ではなく、素の横島忠夫を見てくれたルシオラを。
死なせたく、ないと。
「………今まで俺は、なし崩しに捲き込まれて、俺の意思に関係なく闘ってきた」
だから彼女に、本音をぶちまける。
「けど、これからは!俺は、俺の意志で闘う!」
華奢なルシオラの肩を掴んで、彼は心を決めた。
「アシュタロスは、俺が倒す!!!!」
この瞬間、魔王アシュタロスと横島との闘いが切って落とされた。
闘いは終局へと向かう。
横島につく姉ルシオラは、アシュタロスに随う妹と対峙していた。
真円の月を背景に、蛍の化身と蜂の化身は東京タワーの上空を舞う。
互いが互いの直情のままに。それぞれ慕う者の姿を心に抱いて。
蜂の全力を投じた猛撃。蛍の幻惑を宿した撹乱。
両者一歩も譲らない。
けれど、元々の力の差から徐々に圧され始める、蛍の化身たる姉。
姉妹、同時に放たれる魔力の塊。しかしながら先に撃ち出したのは妹のほうが速かった。
押し寄せる魔力。それは確実に姉―ルシオラに向かって放たれ………。
「今だっ、ルシオラ―――――――――――――――ッッ!!!!」
真っ只中に飛び込んだ横島を呑み込んだ。
突然両者の間に割って入った横島。
彼は魔族の渾身の一撃をまともに食らい、倒れゆく。同時に、遅れて放たれた姉の魔力の直撃を受け、妹は撃墜された。
予想外の出来事に呆気にとられたのも束の間、ルシオラは急ぎ横島を診る。
心臓の鼓動が、体温が、命の灯が、今にも…。
絶望がルシオラの視界を覆い尽くした。
人の身に、魔力の塊それも蜂の化身である妹の妖毒が込められた攻撃を受けたのだ。それを受けた者はものの数分で死に至る。
彼女は、意識を失い眠るような想い人の顔を見つめた。
己の盾代りとなった彼。身を挺して庇った彼。
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