九 道化師は哂う 前編
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クス)と類似しているようだった。
そして尤も稀有な力―――[文珠]。
神々にしか扱えない、神器という伝承にすらなっているこの力。聡明叡智なナルトでさえも、この珠は神話でしか知り得なかった。
[文珠]とは、霊能力をビー玉ほどに凝縮したもので、漢字一文字の念を込めれば様々な効果を発動する。文珠を生成出来るのは、この世界、神界・魔界・人界の中でも横島ただひとり。更に予め創った文珠は、横島の体内に貯蓄でき、彼の意識下ですぐ出現及び発動出来る。
しかし、厄介な事に一度創った文珠は他の者も使用可能。一歩違えれば、この珠一つで世界を左右出来るだろう。なんせ攻撃・防御・治癒・錯乱とその力の方向性は多岐に渡る。
されど傍目には万能に見えるこの文珠も、その効果は本人の意図に必ずしも沿うわけでもない。
と言うのも、持続時間と持続能力に限りがあり、対象の状態が不適当だと発揮されないといった漠然としたモノで。加えて、その力の制御は難しい。
曖昧模糊なこの力は、横島のはっきりしない性格に基づいている。
それと対照的に、あらゆる力の方向性を完全に制御する文珠は、横島の無量無辺な心と寛容さを表象していた。
他人を受け入れられず殻に籠っているくせに、空の如く海原の如く砂漠の如き洋々とした心を持ち合わせている彼は、酷く矛盾している。
自己不信と劣等感の塊である横島の精神は、酷く危うげだ。
けれど世間からは何も考えていない軽薄で向うみずな人間だと認識され、益々彼は追い詰められている。
そんな横島を支えているのが、彼の潜在能力の霊能力だった。
精神安定剤であると共に、その精神状態に左右される力。その矛盾は、確かに表裏者の横島を現している。
もう一度、ナルトはなるほどな、と頷いた。そして同時に、横島に対して危機感を覚えた。
確かに制限や弱点も多いが臨機応変に発揮する文珠は、絶大な力と言えよう。人間はもちろん神族や魔族も喉から手が出るほど欲しい稀有な力。
けれどそんな事を全く気に留めず警戒しない横島に、ナルトは彼の前途を危惧する。横島の向後にまた凶変でも起こるのではないかと。
表情には出さないが彼は内心懸念していた。
(杞憂であってほしいがな…)
そう思うナルトの懼れた通り、映像は流れていく。その映像を第三者が観れば、先見の明があるのではないかと疑えるほど彼の読みは中っていた。
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