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同士との邂逅
九 道化師は哂う 前編
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普通の家族のように愛されたい。皆を喜ばせたい。だからこそあえて自分が笑いものになった。幼い時に出したその結論は、のちに自身の首を絞める事になるとも知らず、彼はおかしな言動を繰り返した。

サーカスのピエロを参考に、横島は演技を繰り返す。
幼いあの日に見たピエロの気持ちを知りたいなんて、そんな言い訳を心に抱き、道化を被り続けた。

わざと大袈裟に振舞い、わざと馬鹿な事をし、わざと目立ち、わざと怒られ、わざと失敗し、わざと皆に笑われようと必死になる。さながらそれは表のナルトそっくりの行動であった。
何の利益にもならないその演技は、日々続けるほど舞台に立っても不思議じゃないくらい完璧になっていく。


しかしながら小学生にもなると、周りは横島が思った通りにはならなくなっていった。
幼馴染と一緒に悪戯すると、横島にばかり矛先を向けられる。悪い事をしていなくても大抵は疑いの目を向けられた。狙い澄ましたように皆が皆、横島を非難した。そして実際に横島が潔白の時は、皆が軽口で弁解した。
仲の良い友達にもどこか軽んじられ、大人達からは問題児と見做される。母には常に呆れられ、父にはよく揶揄される。演技を止めたくても、止められない状況にまで彼は追い詰められた。
加えて父母の意見に従ううちに優柔不断な性格になってしまった彼は、本心を口に出せなくなる。
こういった蓄積が、横島の演技に拍車をかけた。


日常が彼にとっての舞台だった。いつか舞台袖に帰り本当の自分になれることを、それだけを望んで、横島は観客である周囲の人間を笑わせ続ける。しかし完璧なまでの道化自体が横島忠夫だと認識され、気づけば道化に成り下がっていた。

ピエロの気持ちはもう十分知った。もう演技なんてしたくない。

日に日にそう思うが、だからといって演技を止める事は出来なかった。完璧な道化を脱いだ後が恐ろしかった。
どうせ道化を脱いだところで偽者扱いされる。軽口だろうが、宇宙人や悪魔が化けたんだと言われることを予測し、横島は心の中で泣き哂った………―――。


そして皆が自分を理解してくれないのは自分自身のせいだと感じ、有能な父母と端整な顔立ちの幼馴染といった周囲と自身を比べ、己ばかりを責めるようになった。自覚の無いまま傷ついていった横島は、自己不信と劣等感の塊となり、同時に知らず知らず不信感を募らせていく。

笑われる晒し者といった立ち位置であることを常に頭に置き、計算し考え振舞ううちに、道化を被っていることすら忘れていった。馬鹿ですけべでおちゃらけで極度の女好きで能天気で妄想癖があるけど、人気者で中心人物である横島忠夫を演じきる。
皆が求める横島忠夫に扮し、自分が何者なのかでさえ彼は次第にわからなくなっていった。









……果たして
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