九 道化師は哂う 前編
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当初、両親に恵まれ多くの人間が自然と集まるその姿に、子ども―――ナルトは嫉妬を抱いた。
一言で言えば、横島忠夫という人間が子どもと大人の中間という今の年齢に達するまでの成長話。
赤ん坊から子どもに、少年から青年に。
女癖が異常に悪く、馬鹿でスケベな男の性に、三忍の一角でエロ仙人の異名を持つ男がナルトの脳裏に一瞬浮かんだ。
横島自身の視点から見た映像は、まるで映画のように流れていく。それと同時に、彼の心情が手に取るようにナルトの頭へ流れ込んできた。
映像における行動に反して内心では後ろ向きな考えを持つ横島に、次第に嫉妬という概念が無くなり。
映像内の幼子が今の横島の面差しに徐々に似ていくその様を、ナルトは目を瞬かせて眺めていた。
世界同時株安の影響を劈頭に脱した日本は、投機が投機を呼ぶ連鎖反応により開発ラッシュを迎えていた。しかしながら金融融和を背景に、増大する不良債権の中には霊的不良物件も含まれる。悪霊が巣食うビルや呪われた土地。
そういった問題を解決するのが現世の陰陽師であり退魔師のゴーストスイーパー―――GS。
不良物件の霊瘴を取り除くGS達は、その機に応じて無尽蔵に躍動していた。
GSが活躍する時代に生まれた横島忠夫。
彼は当初、霊能力のレの字も知らない子どもだった。けれど環境から、横島は普通の子どもではなくなっていく。
その原因が道化――ピエロだった。
幼子の頃、一度だけサーカスに連れて行ってもらったことがある。
普通の子どもなら、ライオンなどの猛獣を扱う動物芸や空中ブランコといった派手な曲芸に目を輝かせるだろう。しかし横島は、中でもピエロが気になった。その泣き笑い顔を見た瞬間、ドキリと心臓を鷲掴みにされたような不思議な感覚が背筋を這う。他の団員に比べて目立たないのに、客の笑いをとるのに頑張るその姿に、カッコいいとも寂しいとも哀しいとも…子どもながらに様々な感情が渦を捲いた。
元々悪戯好きだった横島は、単なる遊びのつもりでピエロの真似をし始めた。明るくおどけて、皆を笑わせる。怒られても呆れられてもへらへらとした態度をとった。
最初は父母へのちょっとした反抗だった。一般人より抜きんでいる母は、昔から横島にきつかった。尤も彼女は息子に多大な期待を寄せるあまりに厳しかったのだが、幼い横島にはわからなかった。父も母には逆らえず、おもちゃを強請っても滅多に買ってくれなかった。その一方で女遊びが激しい父が妬ましく、同時に羨ましかった。そこで特に女好きじゃなくても父の真似だと思って女好きのふりをした。女好きという共通点を持つ事で父に近づけたと勘違いし、ピエロの演技の上に演技を塗り潰した。厳しい母を困らせ、気を引きたかった。
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