第五十二話
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
もどかしく、それで彼女を覆い隠した。
こちらに力無く顔を向けた彼女は、それでも気丈に口角を押し上げ、笑みを浮かべようとした……
「……下手うっちまって、このザマさ、情けないだろ」
「すまなかった。 ごめんよ……」
「なんで……あやまんのさ、来てくれて、ありがとよ……」
俺は彼女を抱きかかえて、地下牢を出た。
皆が追いついてくる前に、城の応接間のような場所に彼女を横たえ、頭や髪を撫でて謝り続けた。
水筒から水を飲ませようとしたが、そんな力も無いようだったので、口移しで含ませる。
やがて、わずかに応える力が強くなったような気がした。
少し様子を見ると唇が少し動いたようだったので、水を飲ませてやり、彼女の力なく垂れ下がった両腕
----色んな場所の筋が切られているのは間違いなさそうな----が嫌でも目に入り、思わず掌を握った。
彼女の目尻から流れたのにつられてなのだろうか、涙が零れおちた。
少しは顔色もマシになってくれるのではないかと水を含ませたり肩や背を撫でたり、他に俺に何が出来るだろうかと自分の心に問いながら " もう大丈夫 " とか " 安心してくれ " と口にした言葉はもしかしたら俺自身がそう思いたかっただけなのかも知れない。
やがて追いついてきた仲間に部屋の見張りを頼むと、彼もショックなようで怒りや悲しみ、いろんな感情に捕らわれたのか、叫び声が俺の耳を打った……。
俺は、この部屋のすぐ近くにあった厨房とおぼしき場所から水が半分ほど入った龜を運びだし、辺りの部屋から役に立ちそうなものは無いかと視線を巡らせた。
応接室のカーテンを引きずりおろし、見張りを頼んでおいた仲間に、応援と医者とシルヴィアを連れてきてくれるよう頼むと、カーテンを毛布換わりにかけてやり、手ぬぐいを何度もゆすいでは絞り、彼女の傷が目立ってない顔や腿などをゆっくりと拭ってやる。
そうしているとシルヴィアと医者が立て続けにやってきた。
彼女には治療の杖を使うよう頼んだが、医者に、まずは傷を見たり汚れを取ってからにしたほうがいいと言われたのでそれに従い、俺はシルヴィアを伴い、厨房で湯を沸かしはじめた。
沸かしている間に桶や、包帯などを探し出し、彼女の元へ戻った。
医者は問診していたので、受け答えできるくらいには落ち着いたんだろう。
体を拭き清めるのは医者かシルヴィアに頼んだけれど、レイミア自身が俺を望んでくれた。
ターラでの一夜を思い出し、その思い出を語りながら出来るだけ優しく彼女に触れ、汚れを落として行った……
その間に、レイミア救助成功の知らせとともに治療中なのでもうすこし待ってほしいと、隊の皆に触れまわり、ついでに族長の家族の生活スペースから衣類や毛布、シーツなどを運んでくれたのは皆シルヴィ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ