第五十二話
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「なるほどね、そう来たか………あんた、船の上は苦手なのにその覚悟。 今まではあんたへの恩と思ってたけど、これからは気に行ったから手伝わせてもらうよ。 ……ヴェルリー! 生き残ったうちの者集めな! ぶっ倒れてたら地獄から引きずっておいで!」
再び敵が取って返すかも知れないので比較的軽傷な者には見張りを頼み、俺は戦場跡に再び戻った。
まだ息がある者は伴ったシルヴィアが杖で癒し、ごく僅かだが救えた命があった。
既に陽は沈んでいたので松明を照らし、息のある者は居ないかと探し回っていると……輝くものがあった。
レイミアが手放していった……刀身は見なれぬものだが、柄は見覚えがよくあるものだった。
"答える者"に手を伸ばし、握りしめると……俺にはそんなつもりが無く、むしろ止めようと思ったのに勝手に腕が動き、鞘に納まった………
味方として救えた命、捕虜として救えた命、どちらも伴い城門へと戻った。
ここでも彼女が遺棄した愛用の大剣が地面に突き刺さっていたので回収し、早急に拵えを修復するよう、もう店仕舞いしていた鍛冶屋に無理を承知で頼み込んだ。
なんの気無しに大剣の茎を見ると、トラキア前王の名があり、我が子に贈ると刻まれていた……
レイミア隊は一度全員集まり、臨時の指導者を選ぶことになった。
以前からこういう時のまとめ役と決まっていたのでヴォルツを推したが、どういう訳か多くの者が俺に就くよう言ってくれたが心中複雑である……
「では看板は不肖、このミュアハが引き受けさせていただくが、実戦指揮はヴォルツ、臨時の副長はベオで行きたいと思う。 レイミアを取り返す為に皆の力を貸して欲しい」
「応!」
皆の応えのありがたさと、レイミアへの想いとで溢れそうな涙を堪えるのは、戦場での命のやりとりよりも酷だったかも知れない。
交代で支援員を中心に起きてもらっていたが、ほとんどの者には寝んでもらい、俺は市長ら、街の有力者と会っていた。
彼らが言うには、敵がまた襲ってくるかわからないので俺たちに滞在していて欲しいということだ。
カネにしろ武具にしろ便宜を計ってくれるとのことだが……
「こちらとしてもご要請、お引き受けしたいところなのですが……」
「金額に不足があるなら、倍、いや三倍出そう。 あなたの部下達が戦塵を乙女の柔肌で落としたいと言うならそちらの手配もすぐにしよう……」
「守備隊が瓦壊されて苦しいところ、察して余り有りますが、こちらとて全ての要を連れ去られてしまいました。……聞くところによると守備隊の方々が野戦病院からうちの癒し手を無理に連れだし、むざむざ敵に捕らえさせたとか。 レイミアは……わたしの大切な人は、その交換として虜囚の憂き目に遭わされ
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