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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
因果
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のだ。
その症状を防ぐための理想的ログアウトとされているのが通称《寝落ち》で、仮想空間内で睡眠状態に入り、寝ているうちにログアウトして、現実で睡眠から目覚めるというものだ。
俺がベッドにごろんと横たわると、とうとうクッキーを食べ終えたユイが空中をパタパタと移動し、くるんと一回転したかと思うと本来の姿に戻って床に着地した。
長い黒髪と白いワンピースの裾がふわりとたなびき、仄かな芳香が宙を漂う。
ユイが両手を後ろに回すと、僅かに俯きながら言った。
「………明日まで、お別れですね。パパ」
「……そうか、ごめんな。せっかく会えたのにな………。またすぐ戻ってくるよ、ユイに会いに」
「…………あの………」
眼を伏せたユイの頬が僅かに赤く染まった。
「パパがログアウトするまで、一緒に寝てもいいですか?」
「え」
その台詞に、俺も思わず照れ笑いを浮かべた。ユイにとっては俺はあくまで《パパ》であり、AIとしての彼女が接触によるデータ拡充を求めているに過ぎないのだろうが、その姿と言動は俺を動揺させるに充分なほど愛らしい少女のものであって───
「あ、ああ。いいよ」
だが無論俺は気恥ずかしさを脇に押しやって、ユイに頷きかけると体を壁際に移動させてスペースを作った。
にこりと輝くような微笑を浮かべたユイがそこに飛び込んでくる。
俺の胸に頬をすり寄せるユイの髪をゆっくり撫でながら、俺は呟いた。
「早くアスナを助け出して、またどこかに家を買おうな。───このゲームにもプレイヤーホームってあるのかな?」
一瞬首を傾げたユイが、すぐに大きく頷く。
「相当高いみたいですけど、用意されているようです。───夢みたいですね、また、パパと、ママと、三人で暮らせるなんて………」
あの日々のことを思い出すと、胸の奥がぎゅっと締め付けるような郷愁を感じる。
たった数ヶ月前のことなのに、もうどんなに手を伸ばしても届かない。遠い思い出の中へと去っていってしまったかのような───
俺は両腕でしっかりとユイの体を抱き締め、瞼を閉じながら呟いた。
「夢じゃない………すぐに現実にしてみせるさ…………」
久々の仮想ゲーム体験で脳が疲労したのか、すぐに強い眠気が襲ってくる。
「おやすみなさい、パパ」
暖かい暗闇の中に沈んでいく俺の意識を、ユイの鈴の音のような声がふわりと撫でていった。
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