GGO編
百十六話 温もりと殺人鬼の瞳に映るモノ
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その時には既にリョウはDEを彼の方に向けている。
これだ。
この明らかに自身の行動に先回りしてこられている感覚は、まさしく以前自分がこの青年との戦闘時に感じた物と同質の物。自分の見たかった物だと、PoHは理解した。
そもそも、なぜ彼がこんな明らかに自身を追い詰めるような物を見たがったかと言えば、何も彼が戦闘狂で、快楽や酔狂でそれを望んだと言うわけではない。
理由自体は単純。単に、いずれリョウを殺すために他ならない。
以前の戦闘で、正面戦闘をしたとして、あの妙な戦闘能力向上に対しては正面から闘り合う事は不利と理解したPoHはその時点で、リョウとの戦闘をある程度課程付け、いくつかのステップを持って彼を殺す事を計画した。
要は今やっている“これ”も、そのステップの内の一つなわけだ。
リョウの本気をワザと出させ、その正体や弱点を見極める。実際、前回の戦闘から、彼は既に本気に対していくつか仮説を立てていた。PoHなりの観点からリョウに対しては持っていた疑問を更に煮詰めて立てた一つの仮説だ。
――そもそも、始めから疑問だった――
以前、killerに居た頃から、リョウの持つその異常な覚えの良さには、PoHも何時も驚かされていた。
素手、棍棒から携行型のミサイルに到るまで、あらゆるカテゴリーの武器が存在したkillerに置いて、しかしリョウに使いこなせない武器は無かった。
初めて使う武器ですら、リョウは少し使えばあっと言う間にその仕様を理解し、完全に使いこなして見せた。
本人に曰わく、“慣れた”からだそうだ。しかし、そもそも疑問は其処に有った。
一度使用しただけで、ほんの数分の操作で、あるいはあらゆる技を一度見ただけで理解し、次からは完璧に対応して見せる……『そんな物を、本当に“慣れ”などと言う言葉で片付けられるのだろうか?』
例えばである。これはPoHは知る由も無いが、中学生の頃の進路指導。自身の長所を書けと言う指示に対して、リョウはこう答えを書いた。
・勘。
・集中力。
・何にでもすぐ慣れる事が出来る事。
そして何故彼が友人に苦笑されつつもそう書いたのかと言われれば、その理由は即ちこんな理由だった。
“スポーツだろうが数学の公式だろうが英語だろうが、あらゆるものに関して俺は集中的に考え、見て、聞いて、実際に行動する事で直ぐに慣れる事が出来る”
だからこそ、彼は慣れを長所だと言ったのである。
しかし、この表現は少々おかしくはないだろうか。
確かに、スポーツに関しては少なくとも慣れと言う表現も間違いではない。しかし例えば数学の公式や英語を繰り返して使えるようになったからと言って“慣れた”と言う表現はどちらかと言えば少々特殊な部類に入る筈だ
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