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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
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 誰もが全てを救うのは無理だと言う。

 だけどそれでも、俺は諦めることは出来なかった。 

 そんな俺を、皆止めようとしたが、俺は止まることが出来なかった。

 どんな言葉を受けても、どんなことをされても……止まれなかった。

 ただ……泣いて引きとめようとする皆を背に、謝りながら去るだけだった。

 ―――ごめん―――

 ―――悪い―――

 ―――すまない―――

 …………謝るだけしか………………出来ない。

 どんどんと落ちていく思考に引きずられるように、士郎の意識が段々と遠のいていく。

 しかし、


「謝らなくてもいいんだよシロウ」


 優しく包み込むように抱きしめる細い腕と、愛しさに溢れた声がすくい上げた。

「イ、リヤ?」

 何時の間にか膝をついていたのか、河原の柔らかな草の上に膝をつく士郎の身体を、イリヤが身体全体で包み込むように抱きしめていた。
 背中回された手で、優しく撫でるようにぽんぽんと背中を叩く。それはまるで、泣きじゃくる赤子をあやすかのようであり。頭を抱き寄せられた士郎は、最初慌てていたが、微かな胸の膨らみ越しに聞こえる鼓動に、段々とおとなしくなっていく。
 イリヤは背中に回していた手を一つ士郎の白い髪の上に移動させると、優しく撫で始めた。

「わかってる……シロウがみんなを見捨てられないことは……もう知っているから…………どんな言葉でも……行動でも……助けを求める人を救おうとする士郎は……止められないって…………だから……いいんだよ……謝らなくても……」

 空から暖かい雫が落ちてきた。

 それは髪を伝い、頬に落ち、唇に運ばれる。

 塩っ辛いその味に呼び起こされるように、士郎の目尻からも同じ雫が漏れ始める。

「だけどね……シロウ……これだけは覚えていて……あなたはここでのことを忘れてしまうだろうけど……これだけは……お願いだから覚えていて…………シロウは…………一人じゃないって……」

 士郎の身体に回された腕の力が強くなる。抱きしめるイリヤ自身に痛みが走るほどの力は、士郎の身体と心を強く締め付けた。

「例えシロウがどんなところにいても、あなたを愛する人はずっと傍にいるって……リンも、サクラも、ルヴィアも、リズも、セラも、ユキエも、カネも、カエデも……ふふっ……もちろんルイズやシエスタもいるわよ……みんなみ〜んな……ずっとシロウと一緒だよ……」 

 緩やかに解けるように手を離したイリヤは、涙を流す士郎の頬に両手を添え、ゆっくりと持ち上げ自分と視線を合わせる。
 じっと見つめ合う二人。
 河原を吹く緩やかな風が、二人の身体を通り抜ける。

「だから、寂しくなったら……悲しくなったら……辛くなったら……
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