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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
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 ぶるっと身体を震わせる士郎に、イリヤは目を細め笑うと、手を取り走り出した。

「なら私と遊びましょうっ!! 行きたいところが一杯あるのっ!」
「お、おいイリヤっ!!」

 急に手を取り走り出したイリヤに、慌てる士郎だったが、満面の笑みを浮かべ走るイリヤを見つめるうちに、強張っていた身体から力が抜け始めた。

 自分の手を握る、白く小さな手。 

 日の光を反射させ眩いほどの輝きを見せる銀の髪。

 抱きしめれば折れそうなほど小さく華奢な身体。

「……ぁ?」

 不意に視界が滲むのに気がつくと、頬に濡れた感触を感じた。走りながら空いた手で頬に触れると、指の先に湿った感触がある。

「なみ、だ?」

 小さな背中が、元気よく走っている。
 それを滲んだ目で見つめながら、士郎は不意に湧き上がってきた感情に戸惑うような声を漏らした。

 喜び。

 悲しみ。

 寂しさ。

 懐かしさ。

 安らぎ。

 不安。

 突如湧き上がってきた感情に、心が千々に乱れる。
 何故そんな気持ちになるか分からず、戸惑う士郎を導くように、明るい声が響く。

「そう言えば言ってなかったね!」 

 肩ごしに振り返り笑いかけてくるイリヤの笑顔は、

「シロウッ! お帰りッ!!」

 眩いほど輝いていた。


 











「んっ〜〜っ! 遊んだ遊んだっ!! 遊びすぎてもう日が暮れちゃったねっ!」
「ああ、これは家に帰るのが少し……いやかなり怖いな……」

 背伸びをしながら川原を歩くイリヤの隣りを、肩を落としながら足を引きずるように士郎は歩いていた。青空は茜色に変わり。日は遠くに見える山に沈むように、その姿を揺らめかせている。涼やかな音を響かせる川に、滲んだ夕日が写りこんでいる。

「だったら私の城に来る? セラやリズも歓迎してくれるわよ」
「あ〜……リズはともかくセラがな……何でか知らないが、当たりが強いんだよな」
「何か覚えはないの?」
「…………ありすぎてどれだか……」
「全くシロウはもう」

 ますます肩を落とし意気消沈の様子の士郎に、イリヤはくすくすと笑い声を上げると急に駆け出した。士郎から三メートル程離れた前まで行くと、走るのを止めたイリヤは、後ろに手を組みながら、歩き始める。夕日と川から反射してくる夕日の光り。二つの夕日を受け、イリヤの身体が紅く燃えるように光っているかのようだった。
 士郎の前を、イリヤは小さく笑いながら歩いている。

「―――ねぇシロウ……今日は……楽しかった?」

 唐突にイリヤが足を止めると、それに合わせるように士郎も足を止めた。
 イリヤが上げた声は、先程までの明るい笑い
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