第五十一話
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ちおろす訳だから矢の勢いが違い過ぎた。
矢戦での不利を仕方なく認めた敵軍は一度引いて体勢を立て直すようだ。
昨日行った予想は当たり、敵軍はこちらの矢の有効射程ぎりぎり辺りを目安に上半身を縄で縛った人々を幾人か引きずりながら連れて来た。
「腰ぬけのダーナ人! 開門し、降伏しなければお前らの仲間を一人ずつ殺す!」
「助けてください! 私は商売に来ただけなんです。何も悪い事はしていないんです!」
「……どうだ、臆病者ども! お前らのところに向かってきた奴らだ、もしこういう奴らを助けなければ二度とお前らと商売しようって奴は来なくなるぞ!」
「助けてくれー!」
「これは、ただの脅しじゃあ無い」
そう言うが早いか敵の代表は捕らえていた商人の両足に剣を突き刺し、その後、脇腹に浅く剣を埋めた。
彼の上げる苦しそうな叫びに思わず顔を顰めてしまう。
その場に彼を投げ出した敵の代表は声に愉悦の色さえ帯びさせながら
「この男がじわじわと苦しみながら死ぬのを眺めてやろう。 こいつが死んだら次の奴だ。早く我々の要求を受け入れよ!」
その様子を見てから城壁から降りると、門から打って出ようとする者とそれを止める者とで騒ぎになっており、レイミア隊は一纏まりになって騒ぎから距離を置いていた。
俺の姿を認めた彼女は腰に手を当て、げんなりした顔を見せた。
「あぁ、さっき役人さんが来て行って、守備隊の隊長さんの言う事を聞くなら戦ってもいいってさ」
「……じゃあ、指示を仰ぎに行こう」
ベオウルフにその場を任せて俺とレイミアが向かおうとすると、守備隊は正門の閂を開けて我先にと突撃して行く姿があった。
「こいつはマズイな……、負けて引き上げて来るだろうから俺たちはバックアップと門閉めに回ろうか」
「弓箭隊は城壁上に待機、味方が城内に引き上げようとしてきたら援護!」
城壁の上から俯瞰している訳では無いので状況が良く見えないが、順当に行けば守備隊は蹴散らされるはず……
それを防ぐ為に打って出ても、蹴散らされる規模が拡大するだけでなんの解決にもならないということに歯噛みしながらも、一人でも多くの味方が帰りつけるように願うばかりだ。
どれくらいの時が過ぎただろう、薄曇りの中なのではっきりしないが太陽は中天近くまで昇っているのが時折見て取れる。
正面では干戈を交え巻き上がる土埃が立ち昇り、打ち合わされる金属の音、怒号、悲鳴……
勝負付けが済んだのかどうなのか、遂にこちらへ向かってくるわずかな人の群れが目に入る。
もちろんダーナの守備隊だ。
その中には人質にされた民間人を抱えた者も居たが、あとわずかという所で背後から斬りつけられ、もんど
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