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シャンヴリルの黒猫
38話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (2)」
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最初に言った言葉は

『おい、僕と勝負しろ!』

でした。



 クオリが窓から外を見つめた。過ぎ去る木々に何を見ているのかはユーゼリアには分からなかったが、その目は懐かしいものを思いだすように柔らかく、弧を描いていた。



 結果はわたしの勝ちでした。彼はひどく悔しがって、何度も何度もわたしに勝負を挑みましたが、結局わたしは全戦全勝。と言っても、最後の方はわたしも疲労していましたし、なんとかもともとの保有魔力の差で逃げ切ったといった感じでした。わたしはへとへとになりながら家に帰ったのですが、心はとても晴れやかでした。

 翌日も彼は鼻息も荒く図書館にやってきたのですが、わたしは慌てて彼に尋ねたのです。何故いきなりこんなことをするのか、と。彼は将来の夢について滔々(とうとう)と語りだしたのですが、そこでまた一悶着あってやっと、わたしが単に暇つぶしの為図書館にいることを理解してくれたのです。

 彼は、ずいぶんな頑固者でしたから、思い込んだら一直線でした。分からせるのに苦労したことを覚えています。

『なんだ、そうだったのか』

 こちらの苦労なんてなんのその。脱力するわたしにニッコリ彼は笑いかけました。


「それが、彼――フラウ・クレイオ・エウテルペとの出会いでした」



 クオリの瞳の色が曇った気がした。


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