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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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ートに皺を作る。
 翅を失えば、どんなに美しかった蝶であっても、生気を完全に喪失した醜い死骸に過ぎないのだ。
「……悲しいな。モミがあたしを置いて、先へ行ってしまったみたい」
「私はもう戻れないわ。ならば、先へ進むしかないのよ」
 たとえそれが、体の肉を少しずつ切り刻まれていくような激痛に、この命を終えるまで苦しめられる道であったとしても。美しい過去に縋り付くことは、私には許されていないのだ。
 愚かな罪人は、てらてらと光る猛毒が塗られた裁縫針の上を、素足で歩むしかない。数えることなど不可能であると言い切っても良いくらい針の先が迎え撃っていたとしても。立ち止まることも、駆け抜けることも、助けを求めることも出来ない。ただただ無慈悲で、冷酷で、孤独なのだ。
「けれどね、スグ。あなたまで急ぐことはないわ」
 苦しみもがくのは、歯がガチガチと音を立てるくらい寒い。光を望むなんて滑稽に思えるほどの、果てしなく広がる暗黒の洞窟が続く。歩いても、歩いても、……歩き疲れて息が絶え絶えになっても、出口はおろか行き止まりさえ見つからない。いつ終わるのか、それすら分からない。自分がどこへ向かっているのかも分からない。
 そもそもどうしてこの場所に居るのか、その理由を見失いそうになるのだ。
「……モミ、それってどういう……?」
「分からなくて良いわ。けれど、これだけは覚えていてちょうだい」
 眉間に皺を寄せて、口をぎゅっと引き締めるスグへゆっくり近づいていく。腕を伸ばして、彼女の肩に手を置いた。
 ……あなたには、太陽の光がさんさんと降り注ぐ場所で生きて行ってほしい。
 そう願うことだけが、私に出来る最善のことだった。
「――――来なくても良い場所だってあるのよ」
 スグの表情が一層険しいものへと変わっていく。
「来なくても……、良い場所?」
「考えなくてもいいわ。ただ、覚えているだけでいいのよ」
「何それ。意味が分からないよ」
「……自分が幸せになれると思った道を、ちゃんと選び取るだけで良いの」
 いつか、私が取り返しのつかないことになったとしても。スグまで追いかけて来なくても良いのだ。
 スグは優しい。……けれど、それだけ危うさもあるのだ。
「……や、やだ。何なの、まるで遺言みたいじゃない!」
 肩に置いていた手が、バッと振り払われた。すぐさま視線を戻すと、スグがわなわなと体を震わせ、ギッと目尻を吊り上げている。
「それに、その“来なくても良い場所”にモミがいるってことじゃないの!?」
 顔を真っ赤にして激昂する彼女を、“私”は静かに見つめる。何も言わず、視線も動かさず、表情も変えず。するとそんな私に痺れを切らしたのか、スグが飛び掛かかってくるような勢いで私の両肩を掴んだ。力加減が出来ないほど感情が高ぶっているのか、爪が肉に食い
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