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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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もありませーん」
ひょいと肩を上げるスグを私は不思議に思いながら、部屋の壁に取り付けられた時計を見上げた。思っていたよりも時間が過ぎていて、慌ててスグの手を止めさせる。
「もう大丈夫よ。これ以上時間を取らせるのは悪いわ。今日も部活があるのでしょう?」
「そんな……、平気だよ」
「駄目よ。時間は守らなくてはいけないわ」
不服そうに唇を尖らせるスグの背中を、手を伸ばしてポンッと軽く叩く。私の動きが制限されていることをスグは十分理解しているから、強く理由を主張して背中を叩けばそれ以上粘ることはしない。
スグは荷物を肩に掛けると、ゆっくりとした足取りで扉に近づいて行った。しかしドアノブに手を乗せたところで私の方へ振り返り、
「ねえモミ、今度友達が入っている吹奏楽部が大会に出るんだけど、日曜日だし3人で応援に行かない?」
「……3人?」
「そう! あたしと、モミと、お兄ちゃんで!」
「――――スグ」
先ほどまでと口調は変わっていない。しかしその声の裏には、どこか願うような力強さがあった。ちょうど七夕に短冊へ願い事を書くみたいに。
私は無意識に目をそらす。
「…………悪いけれど」
「モミ……」
ガッカリしたように、悲しそうに、スグの声音が微かに震える。
「……こ、今回は断らせないんだからね!」
「…………スグ」
「……何でよ、どうして。あたしたち、あんなに仲良かったじゃない!」
「スグ!」
「モミだって、あの日3人で交わした“約束”を覚えてるでしょ!?」
「…………」
スグの必死な表情を見ていられなくて、顔をそらした。唇を噛み締める。
――――覚えてる。
私は、私とスグは覚えている。……けれどそれは、“あの人”も同じように覚えている確証には決してならない。
そもそも、仮に“彼”も覚えていたとしても、あの“約束”がすでに崩れ去っているのは現然たるものだった。
「……色々な理由を付けて3人で行きたがらないよね。小さい頃みたいに、お兄ちゃんとふざけ合うこともないし」
スグは知らない。
――――スグだけが、私たち“兄妹”の真実を知らないのだ。
私は、なんて残酷なことをスグにしているのだろう。あと数年経てば両親から知らされるからと、先延ばしして、隠し通している。
……きっと、怖いのだ。畏怖しているのだ。他でもない、“アイツ”が邪魔をするのだ。いつも、いつも、枯れて潰れた声で叫び続けて、私を不快にさせる “アイツ”が。
「……そんな、もうふざけ合うような歳でもないでしょう?」
「そうだけど……、そうだけど、あたしは……っ」
「スグ。私たちはもう、無邪気な子どもではないのよ。……少なくとも私は、ただ純粋に日々を過ごしていた頃には戻れないわ」
膝の上に乗せていた両手を握りしめた。ロングスカ
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