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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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グが顔をのぞかせた。今日は土曜日だが、おそらくいつものように部活へ行くのだろう。
「スグ、どうしたの?」
「ほらっ、今日も出掛けるんでしょ? 途中まで一緒に行かない?」
「いいけれど……、私、もう少し時間が掛かるわよ」
「大丈夫、大丈夫! あたしも手伝うし!」
 そう言うが早いか、手慣れた調子で私の外出の準備を始める。こうなってしまったら、もうスグは止められないだろう。素直に手伝ってもらった方が早く終わる。私は苦笑いを作り、肩をすくめた。
「今日もあそこに行くんでしょ?」
「ええ、そうだけれど……、今日はその前に人と会う約束をしていて……」
「人と会う約束?」
 スグがバッと私の方を振り返った。目を丸くさせ、驚いたような表情で私の顔を凝視してくる。けれどすぐに、
「……ああ、なるほど。幸歌さんか」
 私が補足を入れる隙もなく一人で解決させ、ポンと手を打った。
「そう、幸歌よ」
「会うのは1年ぶりくらいじゃない?」
「そうね……、去年は私も幸歌もバタバタしていたし、4月に入ってからも忙しかったから」
 ハンカチとポケットティッシュをバッグに入れながら口にした。
 ――――今でも思い出せる。
 幸歌が事故を聞きつけて病室に駆け込んできたとき、泣きそうな顔をしながらも言ってくれた言葉を。
 それは頭にしっかりと焼き付いていて、離れない。

『大丈夫だよ。私がいるから』

 頭を優しく撫でながら、私の傍にいてくれた。
 私の瞳を、まるで逃すまいとでも言うように、ずっと見ていてくれたのだ。 
 そんな幸歌は、告げていた通り私の事故の翌年――――学年が変わる頃に引っ越して行った。けれどそれまでは、ほとんど日をおかずにお見舞いに来てくれたのだ。看護師さんに私の家族だと勘違いされてしまうくらいに。
 詳しいことは知らないが、幸歌は直前まで引っ越すことを渋ったらしい。私の傍を離れたくないと泣いて、彼女のお姉さんを困らせたそうだ。
 結局、幸歌のお姉さんとスグが連絡を取り合い、私と幸歌が文通出来るようにするということで落ち着いた。
 それからは、お互い携帯電話を持ちメールが出来るようになっても、少しくらい忙しくても、途絶えさせずに文通が続いている。幸歌からの手紙はそれだけで束を作れるようになり、物がほとんど無い殺風景な私の部屋で、確かな色を放っていた。
「幸歌さんっていい人だよね」
「ええ、そうね」
 いつも文頭で、『困っていることはないか、体調を崩していないか』と聞いてくる。優しくて心配性な、掛け替えのない大切な親友だ。
「……まったくモミったら、本当に幸歌さんが好きなんだね」
「もちろんよ。幸歌は私の大事な友人だもの」
「はいはい。……もう、そこまでハッキリ言われると複雑だわ……」
「……は?」
「なんで
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