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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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ておけば? ≪SAO≫にログインしたら気が変わるかもしれないし」
「……ええ、そうね」
 私の思考は露知らず、二人はまた笑って「気にしないで」と言う。
 申し訳なさが、胸を締め付けた。
「――――そういえば、紅葉、時間は大丈夫なの? どこか行くって手紙に書いてなかったっけ」
「……あ、ああ、もうそんな時間になってしまったのね」
 幸歌に聞かれて時刻を確かめれば、確かにもうそろそろ移動しなければいけない時間だった。子どもの人数が、先ほど見た時よりも増えている。
 元々そんな長い時間会う約束では無かった。幸歌がこちらに寄ると言うので、電話で急遽交わした約束だったのだ。……ただそれが分かっていても、名残惜しい雰囲気はもちろんあった。幸歌も何か察した様子の伸一も、浮かない顔をしたので、私は思わず、
「良かったら二人も来る? ここからすぐ近くにあるから」
「……え、でも大丈夫なの?」
「そもそも紅葉はどこに行くの? 手紙でも電話でも、何も言ってなかったよね」
「児童養護施設よ。小学生に勉強を教えるボランティアをしているの。……本当は私の年齢では出来ないのだけれど、施設長の方が母の知り合いらしくてね。掛け合ってくれたらしいわ」
「……そういう施設ってさ、僕みたいな無関係の人間が行くのは難しいんじゃない?」
 伸一が渋るような顔つきになった。幸歌も眉を寄せて、困ったような顔になる。
「そうね。……なら、私が今から電話してみるわ」
「う、うん」
 やはり私も、少しでも長く二人と一緒にいたいという心理が働いているようだ。素早くハンドリムを操作しベンチから離れると、スマートフォンを鞄の中から取り出す。迷うことなく施設の電話番号へコールした。程なくして電話が繋がる。
『はい、弥栄学園でございます』
「私、学習ボランティアに参加している桐ケ谷紅葉と申します」
『ああ、紅葉ちゃんね。どうしたの?』
「実は――――」
 手短に幸歌と伸一の事を話す。彼らがいかに真面目で、優しい性格であるかということも。

「どうだった?」
 数分の通話を終え二人の元へ戻ると、すぐさま緊張気味な表情で声を掛けられた。私は笑みを作り、
「明日、11月生まれの子たちのお誕生日会があるそうなの。だから、その買い出しと準備のお手伝いをしてください、だそうよ」
「じゃあ、もう少し紅葉と居られるんだね!」
 幸歌が満面の笑みを浮かべる。伸一もどことなく嬉しそうな顔だ。
「よし、紅葉行こう! 早く!」
「もう、そんなに急がなくてもいいでしょう?」
「え〜」
「じゃあ僕、紅葉ちゃんの車椅子押そうかな」
「伸一までそんな事言って……。大丈夫よ、一人で出来るわ」
「遠慮しないでよ」
「遠慮なんかしていないわ。伸一にやられると怪我しそうで怖いから言っているのよ
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