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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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れた。あちこちから止めどなく溢れ出る液体と混じる。
 ボタボタ、ボタボタ。
 ぐらぐら、ぐらぐら。
 上も下も右も左も見えない暗闇。熱さが肌を少しずつ焦がし、寒さが体を鋭く突き刺す場所。そこで宙ぶらりんの状態になっている“私”。
 口元を綻ばせた。愛しい姉や友人の顔を思い浮かべながら、糸を自らの手で断ち切る。
「――――ええ、そんなところよ」
 落ちる、落ちていく。
 ……いや、一滴の白すら垂らされていないような黒の中では、その感覚でさえ失われていた。
 落ちているのか、底まで来たのか、それともすでに底に居たのか。
 もう、分からない。
 己の手すら視えない。
 そして、誰も“私”が居る場所を知らない。

「……伸一は?」
「へ?」
 ゆらゆらと揺れる思考を押しとどめ、数秒の間を置いた後、伸一の方へ顔を向けて尋ねた。間抜けな声が上がる。私はその反応に苦笑いをし、
「だから、あなたは≪ソードアート・オンライン≫をやらないの?」
「あっ、それは……」
 何気なく聞いたつもりだったのだが、何故かチラリと幸歌へ視線を送る。彼女も伸一のそれを受け、気まずそうに俯いた。
 その意味ありげな視線での会話を、不思議に思って首を傾げる。
「どうしたの? 何かおかしな事でも言ったかしら」
「う、ううん。そういうわけじゃないよ」
「そう?」
「うん。……それで≪ソードアート・オンライン≫だけど、僕は落ち着いてから始めようかなって。買うのが大変そうだから」
「あら、珍しいじゃない。あなたがこんな話題になっている新作に飛びつかないなんて」
「親が勉強しろって五月蠅くてさ」
「……なるほど」
 それならまあ、納得出来る。スグも中学に上がってから苦手な教科では苦戦しているようで、何度勉強を教えたことか。
「二人はプレイヤーネームもう決めたの?」
「ええ、決めてあるわ」
「うん、私も!」
「幸歌は≪サチ≫、かしら?」

「……え! 正解! なんでわかったの!?」
「ふふ、何でかしら?」
「もう! そういう紅葉は何にするの?」
「“Kika”って書いて、≪キカ≫にするつもりよ」
「キカ?」
 伸一と幸歌が同時に声を上げた。
「……え、どうして≪キカ≫なの?」
「“Momizi”に“K”なんて入ってないし……」
「ふふふ、秘密よ。……でも、一つ目の理由はすぐ分かると思うけれど」
 もう一つの現実世界での名前――――、それは変えることが出来ないらしいし、ずっと使っていく大切な名前だ。だから、私はそれに“Kika”を選んだ。
 理由は2つ。
 一つ目の理由は、私にとっては掛け替えのない、輝いている思い出の象徴から取った。それはとても大切で、絶対に失いたくないものだ。だからこそ、“もう一つの現実世界”にもその欠片
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