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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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陶しいくらいに、いつも、いつも。……その正体はよく視えないけれど。
 ふっと、幼い頃によく聴いた童謡が頭をよぎる。まるで池に落ちたドングリみたいだ。山に帰りたいと泣いて、戻れるはずのない場所を望んだドングリみたいだ。
 
「……はあ」

 私は大きなため息をついた。深く、長く、細く。
 ――――あれから4年の月日が流れた。
 残酷で、空虚な、宙に漂うような日々が続いて、こんな所まで来ていた。
 ただまあ、車椅子で過ごさなければいけない生活になったとはいえ、部屋に引きこもったりはしなかった。というのも、事故後はスグに無理やり連れ出されるようになったのだ。

『色とりどりの景色を見て、空気を吸って、今しか出来ない経験をしようよ! ずっと家に居たらさ、腐っちゃうよ。あたしがモミの足の代わりになるから!!』

 そう言って、スグは私の車椅子を押した。当時小学4年生になったばかりの彼女にそれは重かっただろうに、両親の反対を押し切って、一歩一歩、ゆっくりと街の中を進んだ。
 事故が起きた日は身が凍るんじゃないかと危惧するほど寒かったというのに、もう外は青々とした葉が木々を彩っていた。
「きっと、もうすぐ梅雨になるね〜。嫌だなぁ」
「……そう、だね」
「もう、もっと楽しもうよ〜! ……あ、ねえねえ、ゴールデンウィークはどこに行く?」
「…………」
 私は俯いて、自分の手先を見る。自然と両の太ももが視界に入ってきた。右足の質量はスカートの上から全く感じられなくて、見る度に現実を突きつけられる。
 思わず視界を外したけれど、今度は目の居場所がなくなった。
 しかし、まるで私の思考までも読み取ったかのようなタイミングで、
「モミ、見てみて! 綺麗な花がいっぱい咲いてるよー!!」
 スグの弾けるような声に釣られて顔を上げた。目の前に白い花が飛び込んでくる。
「あの花、名前はなんだろうね」
「クチナシ」
 疑問を口にするスグに、間髪入れずに答える。すると彼女はコテンと首を傾げ、
「……クチナシ?」
「そう。……あと、さっき通った庭にカーネーションが咲いていたよ。ザクロの木とか、ゼラニウムの鉢もあったかな」
「へえ〜」
 スグが嬉しそうにニコニコと笑いながら、感嘆の声を上げる。両手を合わせる彼女の表情はイルミネーションの光のように輝いていた。何がスグをそうさせているんだろう。
「やっぱりモミは物知りだな〜」
「そんなことないよ。ちょっと記憶力が良いだけ」
「ええー、そう? ……じゃあ、家に帰ったら漢字の練習しようよ。来週小テストがあってさー」
「……ちょっと、それ私が小テスト解けって言うの」
「正解!」
「正解じゃないよ、もう!」
「あははっ」
 明るく大きな笑い声に、私も思わず吹き出す。途端に、彼女がこれ以上
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