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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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――――――――2022年11月。
最近のテレビは、もうすぐ発売のゲーム―――――≪ソードアート・オンライン≫の話題で持ち切りだ。
……まあいつもの私なら、ゲームなんて無視するだろう。興味なし、と。
けれど、4年前のあの日、私は変わった。……否、変わらざるを得なかった。
――――左足の自由と、右下肢。
それがあの事故で失ったもの。
ただ、右足は神経信号こそは守られたため、今は金属製の義足を装着している。左足に関しては麻痺が残り、動かすことも出来ない。
……これは、バレリーナとしての死を意味する。
今の私には、バレエでのポジションの1番――――両足のかかとの裏どうしをつけ、足の付け根から左右に開いて立つ立ち方――――さえ出来ないのだから。基本中の基本あり、バレエをやっていない人でも出来ることなのにも関わらず。
それでももしかしたら、手の振りだけでも何か表現出来るのではないかと、最初は色々と試していた。
けれど、何かが違う。私がやりたいのは、もっと、もっと全身を使う美しいバレエ。
左足に関してはリハビリ次第で日常生活で支障が無いくらいには回復するだろうと、医者には言われた。だが、それでは意味が無いのだ。
……左足が動かせるようになっても、義足を装着したとしても、あの頃には戻れない。
あの頃のようには踊れない。
ならば、私が存在を許されている場所はどこなのだろう。
“天才少女”であることを望んでいた周囲の者は離れていく。煩わしいくらいに張り付いてきた学校や教室の生徒は影で噂話をしたり、見下すようになった。両親は一見変わっていないように見えても、ふとした瞬間に腫物を扱うように接する。……“天才少女”にポジションを奪われていた人たちは同情するように泣いていたが、その裏では一体どんな声で笑っているのだろう。
……私は悟った。
もう、あの日のように舞うことは出来ない……、つまり、私には何も残っていないと。価値など無いんだと。
バレリーナとしても死んだけれども、あの日、“桐ケ谷紅葉”も死んだのだ、と。
その事実は、あの事故の前と後の周囲の温度差を比べたら火を見るよりも明らかだった。
だから、足掻くことをやめてしまった。……いや、正確に言えば、やる気力すら湧かなかったと言う方が正しいかもしれない。
……それはバレエだけではなく、絵も、演劇も、弓道も。かつての“紅葉”が好きだったものすべてのことに対して、以前のような高揚感が無くなっていた。
頑張るだけ、願うだけ“無駄”だと思ってしまったから。
そして一度気づいてしまうと、延々と意味の無い時間が続く希薄な毎日になった。
何をしても、どこにいても。
いつも『こうじゃない、何かが違う』と誰かが泣き叫んでいた。
鬱
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