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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十七話 庭園は最後の刹那まで(下)
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か――」と言い淀み、咳払いすると豊久は口を開いた
「個人副官の意味を考えるとあまりいい気持ちがしない、とだけ」
――そもそも、個人副官制度自体、制度の是非だけを問われたら俺は非に一票を入れさせてもらう。必要か不要かと言われたら必要なのだろうが・・・俺の個人的意見ではその後ろに悪の一文字を書き加えるべきだ。何よりも単純にその制度の目的が気に入らない。
要するに軍が将官の為に女衒の真似事をしているのだから。
そもそもが|彼女(かれ)らがそうした事に適した種族(人種?)なのだろうしだからと言って|彼(かのじょ)達の存在を否定する訳ではないのだがそれを利用しようとする考えは俺の好みからは大きく外れている。
 ――要するに皇族・実仁親王殿下は肉で直衛を縛るつもりなのだ。政に肉を絡めるのは嫌いだ。どうも俺は理由にこだわりすぎる性分らしいが――理解は出来ても厭なものは厭なのだ。

「――私と同じですか?」
 そう云って、茜は豊久に静かな瞳を向けた。まるで内心の呟きを聞いていたかのように
「それは――」
答えを探し、言い淀む。まさにその問題が自分に降りかかっている。
――あぁ、畜生め、青臭いなぁ。
「ん?」
 その時――細長い影が庭園になげられた。



同日 午後第三刻 駒城家上屋敷庭園
〈皇国〉近衛少佐 新城直衛


『駒州公閣下が宴を開いていると聞いて約定を果たす調度良い機会と参ったのだが
お邪魔だったかな?』
 頭上から声が頭の内に響いた。まるでファミチキを頼むかのように
 一斗樽を抱えた天龍――坂東一之丞が訪れたのだ。

「いえ、坂東殿。よくぞおいでくださいました」
 わざわざ内地への出迎えに来てくれた義理堅い天龍を新城が歓迎しないわけはない。
 皆を紹介していると先程別れたばかりの駒城父子に豊久達が戻ってきた

『貴方が馬堂殿ですか、御噂は予々聞いております。』
「あー、恐縮です。私は兵達に恵まれただけですが、そう言っていただけると嬉しいです」
 導術独特の脳内に響く声に戸惑っているらしく珍しく豊久はそそくさと主家の人々に出番を譲った。

「いやはや、導術の『声』はどうも妙な感じで落ち着かない。――やぁ、さっきぶり」
と頬を掻きながら新城に話しかけた。
「お早いお帰りだな」
「まぁそりゃあこうも目立っていたら戻るさ。それにしてもお前、本当に妙な引きだな。
坂東と云えば現利益代表と天龍の前統領を輩出した家だぞ」
「相変わらず詳しいな」
「名前だけだよ、天龍と正面から話すのは産まれて初めてだ」
と雑談を交わしていると駒州公の声が二人の耳に飛び込んでくる。
「観戦武官ですと?」
 ――観戦武官?どうして態々その様な事を。
「・・・・・・」
 陪臣は自身が居るのは蚊帳の外、と無感情
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